夜間頻尿は40歳以上の約7割にみられ、排尿障害の中でも最もQOLを阻害する症状であるにもかかわらず、医療機関を受診するものは5人に1人未満に止まっている。症状を過小評価したり、恥ずかしいなどの理由により医療機関を受診しない潜在的な患者に対する適切かつ有効な啓発モデルの構築は、高齢化が進む我が国において喫緊の課題であると思われる。一方、鍼灸治療が排尿障害に一定の効果があると報告されている。 本研究では、鍼灸治療などが含まれる東洋医学の概念であるツボ(経穴)に対する体性感覚刺激を患者自身で行えるセルフケア支援モデルを構築し、その有効性を評価することが目的である。 当該年度では、まず「セルフケア」、「夜間頻尿」に関する文献を収集し、知見を整理した。また、東京都健康長寿医療センター研究所の自律神経機能研究室で得られた知見(平成23年度に学会発表予定)をもとに、同センターの泌尿器科に協力を仰ぎ、夜間頻尿に対するエラストマー製の器具による軽い触圧刺激の有効性を検討するための比較試験を行うべく準備した(平成23年4月に倫理審査承認済み)。 具体的な研究内容は、東京都健康長寿医療センター内で募集した「過活動膀胱」と診断され、適格基準をみたす参加希望者に対して、夜間頻尿への効果が期待できる「会陰を機械的(軽い触圧)に刺激する群」、または、効果が期待できない「頚部を刺激する群」のどちらか一方に無作為に割付け、夜間頻尿に対する有効性をランダム化比較試験によって評価する予定である。 近年、排尿障害に対するOTC医薬品や尿パッドの売上高が年々増加していることなどから、セルフケア支援の需要は高まりつつあると予想される。本研究において、夜間頻尿に対する体性感覚刺激の有効性を認めることができれば、包括的な患者のQOLを向上させることが可能な新たな医療として提示させることが可能となる。
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