研究概要 |
白血病幹細胞(leukemic stem cell:LSC)の残存は、再発・治療抵抗性の一因であるが、LSC維持の分子機構は未だ十分には解明されていない。報告者の属する研究室ではこれまで成体骨髄における活性酸素種と低酸素環境のHSCへの影響について研究してきた。今回、報告者はHSCと同じく低酸素環境に存在すると推定される慢性骨髄性白血病(CML)-LSCの新たな治療標的を同定することを目標とし、CMLマウスモデルを用いて、CML-LSCに特異的に発現している細胞表面マーカーを探索した。 まず、正常マウスの骨髄の造血幹細胞分画(Lineage-Sca-1^+c-Kit^+:LSK)にp210Bcr-Ablレトロウイルスベクター(pMYp210BcrAbl-IRES-GFP)を感染させ、FACSで分取後、レシピエントマウスに骨髄移植し、CMLモデルを作成した。このCMLモデルマウスの骨髄のLSK分画のみが、2次移植でCMLを発症させることが既に報告されている(Nature2010)。そこでCMLモデルマウスの骨髄細胞を採取し、GFP陽性と陰性の集団に分け、さらにGFP陽性集団からLSK分画と、より分化した細胞集団であるLineage-Sca-1^-c-Kit^+:KLS-分画を分取し、GFP陰性のLSK分画と合わせ、他の腫瘍幹細胞で指摘されている細胞表面マーカーやHSCに関連する細胞表面マーカーの発現をFACSにて解析した。具体的には、グリオブラストーマ幹細胞マーカーであるCD133の発現は、GFP陰性LSK分画と比較しGFP陽性LSK分画でやや上昇していた。未分化造血幹細胞マーカーであるCD34はGFP陰性LSK分画と比較しGFP陽性LSK分画で発現がやや低下していた。GFP陰性LSK分画と比較しGFP陽性LSK分画で発現が有意に上昇していたマーカーとして、CD13,CD24,PCLP-1などが挙げられた。しかし、これらのマーカーはGFP陽性LSK分画と同程度にGFP陽性KLS-分画においても発現が認められた。一方で現在、GFP陽性LSK分画に特異的に発現している細胞表面マーカーを見出しつつある。今後は、Bcr-Ablレトロウイルスベクターを感染させた正常マウスの骨髄由来LSKを、着目した細胞表面マーカー陽性群と陰性群に分けて移植し、CML発症に差が生じるか確認し、CML-LSCを含む分画を同定したいと考えている。
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