研究概要 |
本年度は、予算の多くをMRI画像解析用計算機や統計ソフト、およびコンピュータ周辺機器など、MRI研究をおこなう上で必要な電子機器と解析ソフトウェアの購入に充て、研究環境の整備をおこなった。その上で、昭和大学附属烏山病院のMRI装置を用いて機能的磁気共鳴画像法(functional MRI、以下fMRIと省略)用の心理実験パラダイムを考案し、パイロットスタディを経て、選択的注意課題・流動性知能課題・聴覚ターゲット検出課題・言語性作動記憶の4つの課題を完成させた。さらに、烏山病院で成人アスペルガー症候群・統合失調症の患者に実験協力をよびかけ、これまでにアスペルガー症候群約20名、統合失調症群約10名、健常対照群約25名を対象にMRI撮像をおこなった。とくに、選択的注意課題と流動性知能課題については、アスペルガー症候群と健常対照群で統計的比較に必要な実験協力者が得ることができた。その中間的な成果から、2011年度の2つの国際学会(10th World Congress of Biological Psychiatry, 17th Annual Meeting of Human Brain Mapping)と1つの国内学会(第33回日本生物学的精神医学会)のポスター発表演題の抄録を提出した。上記の結果は、アスペルガー症候群のみの結果であり、統合失調症は含まれていないが、前者の脳画像研究は後者よりもはるかに研究数が少ないため、最初にアスペルガー症候群と健常者の比較によって疾患の神経科学的特徴を把握することは、今後統合失調症との効果的な比較方法を考慮する上で重要な示唆を与える。
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