研究課題
本年度は、昨年度から開始した統合失調症の言語コミュニケーション機能に関わるfMRI研究を継続しておこなった。対象は、精神病症状のなかでも、とくに言語機能障害と関連が強いと考えられる言語性幻聴を有する患者を中心にリクルートをおこない、現在までに21名の統合失調症患者のデータを獲得した。当初の計画にしたがって、精神病症状に特に関連の強い機能領域として上側頭回後部に焦点をあて、この領域を賦活する心理課題である言語性記憶課題を遂行中の活動を検討したところ、健常者と比較してこの領域の機能が低下している知見を得た。現在は健常対照群と、高機能自閉症スペクトラム障害(ASD)で精神病症状を呈する患者のリクルートを進めている。また、上記の統合失調症研究と並行して、ASDの認知機能障害のfMRI研究を継続した。選択的注意障害に焦点を当てた実験では、成人ASD当事者24名および健常対照群25名からデータを収集した。解析の結果、ASD群では、課題の負荷に応じて無関係刺激による脳活動を調節できないという知見を得た。また無関係刺激による脳活動の変化と、患者の自閉症的症状の間に有意な関係を認めた。この観察から中間的結果をまとめ、海外学会で発表した。さらに解析を進めて英文論文を執筆し、2011年11月に国際専門誌(Neuroimage誌)に投稿、翌12年3月には掲載が受理された。また、同じく成人高機能ASDの認知機能のfMRI研究として、流動性知能課題を用いた研究を前年度から継続して行い、ASD当事者25名とほぼ同数の健常対照群のデータを収集し、ASD群では左前下側頭回の活動がコントロール群よりも有意に亢進していることを観察した。この結果も論文にまとめて現在国際専門誌に投稿中である。
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Neuroimage
巻: (印刷中)
10.1016/j.neuroimage.2012.03.042