研究課題
変形性関節症(OA)や関節リウマチ(RA)は軟骨変性が起こる代表的な疾患である。これらの軟骨変性疾患では、インターロイキン-1(IL-1)や腫瘍壊死因子-α(TNF-α)等の炎症性サイトカインがタンパク分解酵素の活性化や活性酸素種(ROS)の産生を介して軟骨の変性を進行させると考えられている。我々は、マウス軟骨細胞をIL-1βで刺激し細胞死を誘導するin vitro軟骨変性疾患モデルにおいて、誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)および食細胞型NADPH-oxidase(NOX-2)の発現が上昇し、また、その際に乳酸産生が亢進することを明らかにした。そこで、乳酸輸送担体であるモノカルボン酸トランスポーター(MCT)を阻害したところ、IL-1βによる軟骨細胞死は強く抑制されることを見出した。我々はMCTサブタイプの中で乳酸の輸送に関与しマウス軟骨細胞に安定して発現するMCT-1に着目し、siRNAを用いてその遺伝子発現を抑制した結果、IL-1βによる細胞死とNOX-2の発現は強く抑制された。NOX-2 siRNAの導入でも細胞死は抑制されたため、MCT-1はNOX-2発現を介して軟骨細胞死に関与すると考えられた。Nox-2遺伝子発現を制御する転写因子としてNF-κBが報告されているため、マウス軟骨細胞におけるIL-1β刺激後のNF-κBの活性化について解析した結果、マウス軟骨細胞においてはIL-1β刺激と刺激48時間後にNF-κBの活性化が起こることを見出した。NF-κBの活性化を引き起こす細胞内Ros産生を測定したところMCT-1 siRNAを導入した細胞ではIL-1β刺激によるROS産生が抑制されていたため、MCT-1はIL-1β刺激によるROS産生とNF-κBの活性化を介して細胞死に関与すると考えられた。
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Biochem Biophys Res Commun
巻: 410 ページ: 766-770
J Biol Chem
巻: 286 ページ: 14744-14752
10.1074/jbc.M111.221259
http://www10.showa-u.ac.jp/~oralbio/