嚥下障害の臨床評価法として広く普及している頸部聴診法は呼吸音と嚥下音を聴診することにより健常者と嚥下障害を判別する方法である。今回の研究は頸部聴診の精度を検討する目的で行った。今までの研究の問題点としては加速度ピックアップにより嚥下時産生音を検出していたため、検出音の音質が実際の聴診音とは異なることであった。そこで今回はマイクロフォンを用いた嚥下時産生音検出システムを構築した。同意の得られた頭頸部癌術後患者30名を対象とし、嚥下造影検査中にマイクロホンを用いて呼吸音と嚥下音を検出し、嚥下造影画像とともにDVレコーダに記録した。編集した30サンプル音を8名の評価者にヘッドフォンを通じて提示した。なお各サンプル音は嚥下前呼気音、5mlバリウム溶液嚥下時の嚥下音、嚥下直後の呼気音で構成した。嚥下造影画像を提示せずに、各評価者にサンプル音を聴取させ、健常嚥下か嚥下障害かを判定させた。頸部聴診の判定精度を評価するため、聴覚的判定と嚥下像画像所見の一致率を検討した。判定一致率は80%以上であり、頸部聴診の信頼性が示された。
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