今年度は、「意思決定」に関する文献検討を行い、それをもとに患者・家族の意思決定支援ガイドライン(胃瘻造設による経腸栄養管理版)を試作した。 はじめに、「胃瘻」に関する国内外の文献検討を行い、胃瘻造設の適応と禁忌、胃瘻造設後の生存率、胃瘻造設後の患者のQOL、胃瘻造設を検討するうえでの患者・家族の意思決定支援に関する文献を抽出し、検討した。 次に、患者・家族の意思決定を専門に研究しているOttawa Health Research Instituteのホームページに公開されている「長期に渡り胃瘻を留置する高齢患者のための意思決定支援ガイドライン」を日本語に翻訳した。一旦翻訳した後、難解な医療用語を避けて患者・家族が読んで分かる平易な言葉に変えた。それに加え、胃瘻造設後の患者生存率のデータを日本人を対象とした研究から導き出されたものへと変更し、胃瘻造設後の患者の生活の質に焦点を当てた研究結果をガイドラインの中に加えた。 試作したガイドラインについて、臨床現場で胃瘻造設を検討する患者・家族の意思決定を支援する立場にある医師2名に検討を依頼し、臨床で活用するための改善点について助言を得た。医師より「患者・家族が胃瘻造設をするか否か検討する場面において活用できる」という意見を得た。また、本研究を紹介する論文を朝日新聞に投稿し掲載されたところ、記事を読んだ市民数名から「ガイドラインの早期完成を望む」という意見があった。本年度の研究成果は、胃瘻造設をするか否か決断を迫られる患者・家族の意思決定を支援するガイドライン開発の基礎として、重要であったと考える。 来年度は、ガイドラインのレイアウトを整えて読みやすいものとする。医療提供者だけでなく高齢患者やその家族にも検討を依頼し、ガイドラインを精練し完成する予定である。
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