生体内で虚血など感染を伴わない細胞死が発生した場合、急性炎症反応が認められる。このような自己細胞の傷害を免疫系が検知する分子機構は解明されていない。最近、死細胞に対する獲得免疫を導く受容体として、樹状細胞のみに発現するCタイプレクチン分子、Clec9aが同定されたがそのリガンド分子は不明のままである。本研究ではClec9aのリガンド分子を同定することを目的とする。さらにClec9aやClec4eと相同性が高く、マクロファージに発現するC型レクチンのうち、細胞死を認識する機能を持つ分子、さらにそのリガンド分子を特定する。最後にこれら同定されたCタイプレクチン分子、そのリガンド分子のIn Vivoでの役割を解明する。 (1)Clec9aのリガンドを同定するために、Clec9aの細胞外ドメインを免疫グロブリンのFc部分に結合させたキメラタンパクを作成した。プロテインAビーズを用いてClec9a結合カラムを作成し、リガンド分子を精製、質量分析機により同定する予定である。(2)Clec9a、Clec4eと相同性の高いCタイプレクチン15分子をNF-ATリポーター細胞に発現させ、死細胞を認識する受容体を同定したところ、C正ecgaにおいてのみNF-ATリポーター活性が認められた。 (3)(1)(2)で同定したClec9aリガンド分子、新規Cタイプレクチン分子およびそのリガンド分子のIn Vivoでの細胞死に対する炎症への関与を、腹腔を用いた好中球遊走アッセイ並びにアセトアミノフェンを用いた肝細胞傷害モデルにおいて検討する予定である。これらの結果から、Clac9aが死細胞を認識して炎症を惹起する受容体であることが明らかとなった。今後、Clec9aのリガンドの同定、さらに新たな自己傷害を認識する受容体およびそのリガンド分子の同定はこの炎症反応に対する新規介入点を生み出すこととなる。
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