本研究は、中高年女性に好発するシェーグレン症候群の患者の家事労働を含む仕事や生活全般および療養生活のワークライフバランスの実態について困難な点、また工夫している点などを明らかにすることで、慢性疾患を持ちながら生活する中高年女性と彼女らの職場や家族などへの理解を深める健康支援を検討することを目的として行った。初年度は、実態の基礎資料を得るため、8名のインタビューを実施した。 診断から現在に至るまでのドライアイ、ドライマウスおよび代替療法などのヘルスケアにかかる費用や心理的負担、家事労働や仕事および受信や療養にかかる時間、生活時間などの工夫している点や困難な点などについて情報を得た。 その結果、30代から70代まで幅広い年代の女性から協力を得た。背景は様々であったが共通するのは、病気の受容までの過程では、内科、眼科、歯科、心療内科など複数の科に頻繁な受診をしており、症状も精神的にも安定せず治らない病気になってしまったという自分自身との葛藤の期間を経験している。しかし、病気と向き合うという受け入れの心境になった時期に症状への対処方法が見つかり、仕事や生活のバランスをセルフコントロールできるようになっていた。一方でシェーグレン症候群という疾患を抱える女性たちのセルフヘルプ機能が、疾患との付き合い方として参考になり、社会や家族などから孤独に陥らないような働きを担っていた。「シェーグレン症候群になったからこそ経験できる」ということがワークライフバランスに生かされているようであった。病気を受容するには、葛藤の期間を経験しているからこそであり、さらに患者同士のセルフヘルプグループがその一助となっていた。 今後さらに個人の中に生じている葛藤や受容について調べ、難治性疾患の患者への健康支援を目指す。
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