本研究は、中高年女性に好発するシェーグレン症候群の患者の家事労働を含む仕事や生活全般および療養生活のワークライフバランスの実態について困難な点、工夫している点などを明らかにすることで、慢性疾患を持ちながら生活する中高年女性と彼女らの職場や家族などへの理解を深める健康支援を検討することを目的として行った。H23年度は昨年度のインタビューの結果をもとに質的に分析を行い、「シェーグレン症候群患者の疾病受容過程の思い」として論文にまとめた。 さらに今年度はインタビュー結果をもとに調査表を作成し、412名を対象に質問紙調査を行った。結果、316名から回答が得られた。平均年齢は62.1(SD12)歳、診断からの年数は10.5(SD7.7)年であり、好発年齢といわれている50歳前後に診断がついた人が多かった。今回のアウトカムである抑うつ尺度(CED-D)得点は、平均23.0(SD11.1)であり、抑うつ状態にある人が多いことが明らかになった。そこでCED-Dの結果と有意な関連のあった項目を投じたステップワイズ法(変数減少法)を実施したところ、【療養生活において楽しめること】【レイノー現象】【疲れによる仕事への影響】【周囲の理解不足】【趣味などの行動制限】がCES-D得点に有意な関連のある項目として抽出された。シェーグレン症候群患者の主たる乾燥症状は、個々には抑うつに有意な関連を認めたが、ステップワイズ法分析では抽出されなかった。シェーグレン症候群という慢性疾患を持つ女性たちにとって、身体症状をセルフコントロールし、生活を楽しむ能力を身につけることが抑うつ対策として重要であるといえる。また患者らの努力だけではどうにもならない、周囲の理解や職場の理解が患者らの精神面への影響を及ぼしていると推測できる。
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