研究概要 |
本研究では、口腔衛生の向上で有用性の高いデキストラナーゼ、フルクタナーゼを対象として、酵素遺伝子の特定の領域(ドメイン)を互いの領域とシャッフリングさせる手法(ドメインシャッフリング)を実施するとともに、フォールディング手法を活用することにより、熱安定性や基質特異性を大幅に向上させた高機能キメラ酵素の創出を目指している。 平成22年度は、ドメインシャッフリングによるキメラ酵素の創出を目指した。Streptococcus mutans(S.mutans)は、デキストラナーゼA, Bの2つのデキストラナーゼ遺伝子を持っている。デキストラナーゼは、バイオフィルム中の糖質の分解をする。 はじめに、S.mutans(UA159)のデキストラナーゼ遺伝子のクローニングを行った。S.mutansのDNAを抽出、精製し、PCRを行ってデキストラナーゼ遺伝子を増幅、精製を行った。次に、精製したデキストラナーゼ遺伝子A, BをClonig vectorであるpUC118, pUC119にこれらの遺伝子をクローニングし大腸菌に導入した。pUC118, pUC119にクローニングしたデキストラナーゼ遺伝子A, BをそれぞれIPTGを用いて、大腸菌に発現誘導させた。大腸菌の培養上精、細胞粉砕液それぞれに対して、デキストランを基質として、Somogyi・Nelson法にて、発現させたデキストラナーゼ遺伝子Aの酵素活性を調べた。その結果、デキストラナーゼ遺伝子AをpUC118に組み込んだものにおいて、培養上清、細胞粉砕液それぞれに強い活デキストラン分解活性が認められた。このように本年度において、バイオフィルム分解酵素のクローニングからバイオフィルム分解活性の測定法に至る酵素精製、評価方法の一連の実験系の確立ができた。 S.mutansのフルクタナーゼ遺伝子は、デキストラナーゼ遺伝子と同様にA, Bがあり、すでに、フルクタナーゼ遺伝子Bのクローニングを行い、Somogyi・Nelson法にて酵素活性を検証している。 平成23年度は、デキストラナーゼ遺伝子とフルクタナーゼ遺伝子を用いて、キメラ酵素を作製し、酵素改良を行い、人工口腔装置によるバイオフィルム分解能の解析を行う予定である。
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