本年度は、申請者がこれまで地域包括支援センターで取り組んできた活動について、行政経験研究者、老年学研究者、地域包括支援センター業務に関する研究者と共に振替入りを行った。また、新潟県内の5つの地域包括支援センター(直営3ヵ所、委託2ヵ所)の保健師から特定高齢者(現、二次予防)施策の現状と改題についてインタビュー調査を行った。 これらのインタビューから、特定高齢者施策を推進させるには、特定高齢者の発掘から、事業への参加、終了後へのフォローなど一連の流れに多職種との連携・調整が行われていることが再認識できた。また、行政直営の地域包括支援センターの中には、介護申請の初回相談を地域包括支援センターがすべて行っているため、場合によっては介護保健サービスでなく特定高齢者施策として対応するなどの工夫が確認されている。 一方で、行政から委託されている地域包括支線センターにおいては、特定高齢者施策の重要性を認識しながらも、要支援認定者への対応や虐待や権利擁護に関わる業務が多いために対応が十分でないことが明らかになった。また、介護予防教室や家庭訪問など保健師特有の活動機会に特定高齢者に関する事業へつなげることが直営の地域包括支線センターの保健師に比べて行われていいない様子が伺われた。これらの背景には、職員個々の能力よりは、地域包括支援センター内の各々の業務が連動していないためと思われる。 これらの調査から、これまで申請者が行ってきた取組は、再現性の高いものであることが確認された。このことは、行政から委託されている地域包括支援センターにおいても現場の専門職にとって無理がなく、継続性がある取り組みができる可能性を示唆するものであり、平成23年度に実際に特定高齢者施策の推進を目的とした介入研究を行うための基礎的な資料となった。
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