関節リウマチ(RA)の病像の首座は関節滑膜にある。従来RAの治療法として滑膜切除術が行われてきたが、これは手術侵襲を伴う。本研究では手術に依らない新しい滑膜切除法の一つとして光線力学療法(フォトダイナミックセラピー)(PDT)をRA患者の病的関節滑膜を標的に行ない、このための基礎データをえることを目的とする。[方法]RA、変形性関節症患者のインフォームドコンセントのもと、人工関節置換術の手術時に関節滑膜を採取する。これをコラゲナーゼ処理後、培養した。本研究ではATXS10-Na、フォトブリン、あるいは5-aminolevurinic acid (5-ALA)を培養細胞へ投与し、光感受性物質の細胞内小器官への取り込み部位について検討した。さらにRAの疾患モデルであるコラーゲン誘導関節炎モデル(DBA1/JマウスをII型コラーゲンで2回免疫し、関節炎を発症させる)を用い、このマウスに光感受性物質を静脈内投与もしくは腹腔内投与し、一定時間後に405nmのレーザー光を関節炎発症関節、非発症関節に照射し、その蛍光量からの光感受性物質の関節内への取り込み量を測定した。 [結果]光感受性物質の細胞内小器官への取り込み部位についての検討では、ATX-S10(Na)はライソゾーム中心に取り込みが見られ、5-ALAはミトコンドリアのみでなく、他の部位にも取り込みが見られ、その部位の詳細については現在検索中である。 コラーゲン誘導関節炎マウスの腹腔内へフォトフリン、5-ALAを投与2~3時間後に関節の蛍光を測定した結果、関節組織に蛍光は見られたものの、関節炎を発症した部位と発症していない部位における蛍光強度に明らかな差が見られず、動物実験においてPDTを行うべき至適条件設定は未だできていない。
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