生体は、上皮細胞の粘膜バリアにより抗原の侵入を防いでいる。そして、それを担っているのがタイトジャンクション(TJ)である。応募者は、このTJは通常、アレルゲンの透過を抑制しているが、環境や食品中の化学物質等の作用により、一旦バリア機能が破綻すれば、過剰のアレルゲンの透過・侵入を許すこととなり、その結果、免疫担当細胞がさらに惹起され、アレルギー症状をより増悪する作用を引き起こす可能性があるものと推察した。本研究は、未解明なアレルギー増悪作用物質の探索とその検証に焦点を絞り、我々の生活環境中の化学物質を検討対象として、簡易かつ高精度の培養細胞系のin vitro試験法を用いてバリア機能の破綻能を有する化学物質の探索を行った後、その探索物質について動物を用いたin vivo試験により検証と作用機構の解明を試みるものである。昨年度の結果を受け、本年度はダイオキシン類と油脂によるデキストラン透過性をin vitroもしくはin vivoで評価し、ダイオキシン類による抗原特異的な抗体産生能への影響も併せて評価した。Transwellを用いたin vitroデキストラン透過性の結果、ダイオキシン類は分子量4kDaのデキストランのみ下層への透過が観察された。マウスを用いたin vivoデキストラン透過性の結果、コーン油は分子量20kDaまで、オリーブ油は分子量4kDaのみのデキストラン透過性が観察された。また、マウスにダイオキシン類と抗原とを経口投与することでダイオキシン類の投与量依存的な抗原特異的な抗体価の上昇が観察された。これらのことは、我々の生活環境中の化学物質が上皮細胞バリアを破綻させ、尚且つ免疫攪乱作用を示すことを示唆するものである。
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