研究概要 |
2010年末、65歳以上の外国人登録者数は13万人に達し、介護保険サービス利用者の増加が見込まれる。しかし、在日外国人の介護保険統計は未整備のため、実態は明らかではない。介護保険制度における在日外国人は、(1)外国人登録をしており、かつ入管法により入国当初の在留期間が1年以上ある者、(2)外交官、領事官、短期滞在もしくは不法滞在者でない人、(3)適用除外規定(身体障害者施設等に入所している者、別制度の枠組みで対処するため)でない人、という要件を満たせば原則適用される。厚生労働省の「介護保険事業状況報告」では、第1号被保険者数の内訳の一つとして、「外国人被保険者数」が公表されているのみであり、2007年3月末において約11万人である。本研究は、在日外国人の介護保険における居宅介護サービス利用の実態について明らかにすることを目的に、大阪市をパイロット地域とした横断調査を実施した。 対象は、65歳以上の外国人登録者17,410名が居住し、全国随一の外国人高齢者集住地域である大阪市に所在地がある、居宅介護支援事業所および地域包括支援センター総計1,106カ所に所属するケアマネジャー(CM)とした。 医療・保健・福祉総合情報サイト「WAMNET」(独立行政法人福祉医療機構が運営)のデータベースより介護保険事業所の所在地別検索を行い、「大阪市」に該当し公表されている上記事業所すべてのケアマネジャー宛に無記名自記式質問紙票を送付し、返送用封筒によって回収した。質問項目は、在日外国人の担当経験、現在担当している在日外国人の利用者情報(国籍(出身地)・性別・年齢・家族構成・利用中のサービス・日本語によるコミュニケーション能力・経済状況等)であった。 結果、460名のCMより回答を得(回収率25.5%)、312件の在日外国人の利用者情報を得た。CMの43.2%が在日外国人の担当経験をもち、国籍(出身地)別内訳は「韓国・朝鮮」291件(93.3%)、「中国」12件(3.8%)の順に、7か国におよんだ。利用者の74.7%が後期高齢者であり、75.3%が女性であった。家族構成は、独居(54.8%)、夫婦二人暮らし(16.7%)の順に多く、利用が多いサービスは、訪問介護(67.6%)、通所介護(43.9%)、福祉用具貸与(41.3%)であった。CMが、日本語によるコミュニケーションが困難ととらえている利用者は34.3%、経済状態が困難ととらえている利用者は57.1%におよび、年齢との関連において有意差が認められた(p<0.001)。在日外国人の介護は身近な問題となっており、日本語や経済に困難を抱える後期高齢者が多く含まれていることが明らかになった。支援策を講じる上で前提となる統計整備とともに、多くの課題が示された。 尚、本研究成果の一部は、第26回日本国際保健医療学会学術大会において発表した。
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