本研究は、次代を担う中堅看護師を対象に、教育的支援を行う介入研究であり、次の2点を目的とする。 1.中堅看護師への教育的支援方法としてのナラティヴ・アプローチの具体的な内容を明らかにする 2.中堅看護師にナラティヴ・アプローチによる教育的支援を行い、その成果と限界を明らかにする この目的を達成するために、平成22年度は、第1段階【支援方法の枠組みの検討】、第2段階【具体的な支援方法の企画】の手順を踏んだ。 支援方法の枠組みは、先行研究およびこれまでに研究者がナラティヴ・アプローチを意識して個別に教育的支援を行ってきた経験から、次の2つの方法を参考に検討した。1つは、研究者がナラティヴ・アプローチの基本的構えである無知の姿勢により、看護師の経験世界に接近しながら新しい意味を共同生成する方法である。2つめは、「ナラティヴ・アプローチを実践したい」という看護師に対して、ナラティヴ・アプローチの理論的背景の学習をしながら、その看護師が目標とする対象者へ実践を行いつつ、振り返りや応用について考えるという支援である。 これらの方法の共通点は、対話を基盤としたかかわりによって看護師に認知の転換が起こり、そして意識、姿勢、行動が変化してくることが挙げられた。相違点は、看護師がナラティヴ・アプローチの対象者か実践者なのかという点である。つまり、2つめの方法では、ナラティヴ・アプローチを意識し体得することで、応用や伝播していく可能性に開かれているといえる。多様な経験とキャリアアップへの課題をもつ中堅看護師には、未来につながる応用可能性に開かれた2つめの方法が効果的であると考えた。 以上の検討結果から、ナラティヴ・アプローチの学習と実践による新しい意味生成を通した自己形成を目的とした教育支援方法として、1年間の研修プログラムを考案した。平成23年度は研修を実施し、その内容と成果についてまとめる予定である。
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