本研究は、次代を担う中堅看護師を対象に教育的支援を行う介入研究であり、次の2点を目的とする。 1.中堅看護師への教育的支援方法としてのナラティヴ・アプローチの具体的な内容を明らかにする 2.中堅看護師にナラティヴ・アプローチによる教育的支援を行い、その成果と限界を明らかにする この目的を達成するために、平成23年度は、第3段階【フィールドにおける支援の実施と分析】、第4段階【教育的支援方法の内容および成果についてまとめる】の手順を踏んだ。 教育的支援は、急性期総合病院における中堅看護職者対象の研修として位置付け、小グループで1年間実施した(3時間/回/月)。教育目的は、ナラティヴ・アプローチの学習と実践によって、自己の看護実践の意味を見出し、より生きいきと活躍することとした。主な内容は、ナラティヴ・アプローチの理論的背景を深める、理論的背景と自己の実践の接点について考える、自己の看護実践を活写する、自己の実践を伝えることを基準とした。 研究者も支援者として参与していることから、研究者と参加者との相互作用を含めた現実をデータとして扱った。具体的には、参加者のレポートに加えて、支援中のやりとりに関する記述である。分析にあたっては、ナラティヴが本質的に内包する他者性と共同性を参考に、関係性、文脈、生成された意味、変化プロセスに着目した。 分析の結果、参加者には明らかな変容が2点見てとれた。"私の看護実践"に意味が生まれそれを重視すること、"私らしい看護実践"の言語化により主体感覚をもって未来を志向することである。この変容は、本支援の特徴である、安心して自由に語り合う時空間の設定、ナラティヴ・アプローチによる"私"の経験世界の活写の影響を大きく受けていると考えられた。 2012年3月、所属先にて公開シンポジウムを開催し成果を発表した。引続き関連学会3か所での発表、専門雑誌への投稿を準備中である。
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