多くの亜鉛要求性酵素は、細胞内分泌経路でアポ型からホロ型へと変換され活性化されることが知られている。亜鉛要求性酵素の一つである組織非特異的アルカリフォスファターゼ(TNAP)の活性化には、分泌経路に局在する亜鉛トランスポーター(ZnT5/ZnT6ヘテロ複合体およびZnT7ホモ複合体)が必要であるが、その活性化機構の詳細は明らかにされていない。そこで本研究では、分泌経路の局在する亜鉛トランスポーター複合体を全て欠損させた三重欠損株に(この株ではTNAP活性が完全に消失する)、亜鉛の強制導入や様々な亜鉛トランスポーターの変異体などを発現させるレスキュー実験によって、亜鉛トランスポーター複合体によるTNAPの活性化機構の解明を試みた。三重欠損株に亜鉛を強制導入したところ、分泌経路内に十分量の亜鉛が存在するにもかかわらず、TNAPは活性化されないことから、亜鉛トランスポーターはTNAPに亜鉛を供給する以外の役割を持つことが示唆された。そこで三重欠損株でのTNAPタンパク質の安定性を調べたところ、亜鉛トランスポーターが存在しない条件ではTNAPは分解されることが判明した。一方で、三重欠損株に亜鉛輸送能を失った変異体を導入した細胞株では、TNAPタンパク質は分解されずに不活性型のアポ型として存在していることから、亜鉛トランスポーターの存在がTNAPタンパク質の安定化に必要であることが明らかになった。これらの結果より、TNAPタンパク質の活性化は、まず亜鉛トランスポーター複合体によって安定化された後に、亜鉛が供給されるという二段階の制御によって行われていることがわかった。
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