研究課題
がん遺伝子MYCNは神経芽腫で高頻度に遺伝子増幅し、悪性化に中心的な役割を果たすことが明らかになっている。1990年、MYCN遺伝子領域のアンチセンスDNA鎖からmRNAが転写されることが示され、このアンチセンス転写産物はNCYMと命名された。NCYMはMYCNとともに神経芽腫予後不良群において増幅し、過剰発現することが示されていたが、その生理的機能は明らかではなかった。神経芽腫106検体におけるNCYM mRNA発現量をリアルタイムPCR法により定量したところ、NCYM mRNA発現量はMYCN mRNA発現量と有意に相関し、予後不良群において高発現した。内在性NCYMタンパク質を同定するため、抗体を作製し、神経芽腫細胞株における発現量をウエスタンブロッティング法により検討したところ、核内タンパク質として検出され、NCYMタンパク質はMYCNの増幅した細胞において高発現した。また、クロマチン免疫沈降法による解析の結果、NCYMタンパク質がMYCNのプロモーター領域に結合し、ヒストンのアセチル化を昂進することで、MYCNの転写活性化に寄与することを見出した。ヒト神経芽腫細胞CHP134にレチノイン酸を処理すると細胞死が誘導されるが、このときMYCNおよびNCYM発現量は低下した。さらに、CHP134細胞におけるNCYMノックダウンによりMYCNの発現低下およびアポトーシスが誘導された。以上の結果から、NCYMは転写因子としてMYCNを誘導することで、神経芽腫の悪性化に寄与する可能性が示唆された。
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