アレルギー性鼻炎や慢性副鼻腔炎などの炎症性鼻副鼻腔疾患に対して内視鏡下鼻内手術が数多く施行されているが、気道の形成、嗅覚、air conditioning作用、共鳴作用という基本的な機能を術後に最適化するためにどのような手術手技を採用すればよいのかという点についてはエビデンスが蓄積されていない。この点に鑑み、本研究ではCTを基にした鼻副鼻腔の3次元再構築と気流解析を行い、これまでの手術手技を気流という観点から再検討して内視鏡下鼻内手術の手技の最適化のためのエビデンスを確立することを目的とする。最終的には個々の患者の病態に合わせて最適な手術操作のシミュレーションを術前に行うという内視鏡下鼻内手術のオーダーメイド化を確立することが究極の目標である。 正常人のモデルを作成し、鼻内気流モデルの標準状態の確立を行った。 次に鼻中隔穿孔患者の術前CTを元に、3次元気流解析の方法はDICOMデータで出力されたCT画像からボリュームデータを作成し、気流解析を行った。術後モデルは、術後のCTを参考とし、術前CT上でモデルの加工を行った。 鼻中隔穿孔患者の閉鎖術前後の3次元気流解析を行い、正常人と比較検討した。閉鎖後は気流が改善し、上鼻道方向にも気流が出現していた。穿孔縁周囲に、圧勾配、せん断ひずみ速度の上昇がみられ、また、前縁には乱流の出現がみられた。これらが鼻出血、痂皮脱落に関連している可能性が考えられた。術後にはこららの所見は軽減していた。 今回の結果は実際の臨床効果と一致しており、術前に術後の機能を評価する上で3次元気流解析が非常に有効な方法であると思われた。以上を学会で報告し、現在論文を執筆中である。ここで得られた情報をもとに前向き研究として、いままでの手術方法で行った群と、気流解析にて算出されて最適とされた手術方法とを比較検討する予定である。
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