本年度は前年度に胎仔骨石灰化のためのカルシウムおよびマグネシウム輸送路の候補として同定したTRPM6がヒトにおいても同様の機能を担い得ることを確認するために、ヒト胎盤絨毛上皮細胞のモデルとしてBeWo細胞に着目した。BeWo細胞は通常の培養条件では未分化の栄養膜細胞(cytotrophoblasts)の形態および特徴を呈するが、細胞内のcAMP濃度を増加させると合胞体栄養細胞(syncytiotrophoblasts)様の細胞に分化することが知られている。そこでBeWo細胞におけるヒトTRPM6の発現を調べたところ、通常の培養条件ではほとんど発現が見られなかったが無血清・dbcAMP存在下でヒトTRPM6のアイソフォームの1つであるTRPM6aの発現が顕著に増加した。一方、TRPM7の発現量に有意な違いは認められなかった。以上のことからTRPM6がヒトにおいても合胞体栄養細胞において母子間カルシウムおよびマグネシウム輸送を担い得ることが示唆された。
|