研究課題
1-1) 新生児低酸素性虚血性脳症のモデルラットを用いて、neurosteroidであるallopregnanolone(ALLO)と、その前駆体であるprogesterone(PROG)の効果を検証した。仮説とは逆に、生後7日齢(脳の成熟度がヒトの生後0日と同等とされている)ラットでは、ALLO、PROG投与により脳障害が増悪した。PROGは脳内でALLOへと代謝され、ALLOはγアミノ酪酸(GABA)の作動薬として働く。新生仔では、GABAは成獣と異なり、神経興奮性に働きとの報告がある。実験を行ったところ、生後14日齢においてもALLO、PROG投与ともに脳障害を増悪させたが、生後7日齢と比較して増悪の程度は軽度であった。生後21日では脳障害を悪化させることはなかった。この神経障害増悪の作用機序がGABAを介するかどうかを検討するために、GABA受容体阻害剤を併用する実験を行ったところ、ALLO投与による神経障害の増悪は、打ち消された。新生児低酸素性虚血性脳症に対する新しい治療法を探るという本来の目的は達成できなかったが、ALLO、PROGともに成人脳梗塞のげっ歯類モデルでは脳保護効果があると近年報告されたことから、新生児と成人との脳障害の違いを理解する上で、興味深い結果が得られたと考えている。また、PROGは臨床で、他疾患に対して既に使用されており、産科、新生児領域での使用に注意を喚起する研究結果である。1-2) Ghrelinに神経保護作用があるかどうかを探ったが、明確な効果は認められなかった。2) 臍帯血採取より技術的に容易で、性質的に類似点の多い骨髄血(特に単核球)を用いて、新生児低酸素性虚血性脳症に対する効果の検討を開始した。
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Experimental Neurology
巻: 226 ページ: 285-292