研究課題
これまでに、super-SCIDマウス(重度複合免疫不全マウス、以下SCIDマウス)の体内にヒト胎児(妊娠12週未満)の肋骨を含む周辺部位を移植した。移植後3ヶ月で、SCIDマウスに移植したヒト胎児組織は、脂肪組織様組織に分化・増殖した。胎児肋骨から分化した脂肪組織様組織は、多房性の脂肪滴で満たされ、形態学的に、この組織は、ヒト褐色脂肪組織であると示唆された。ヒト褐色脂肪組織であることを分子レベルで確認するため、SCIDマウス体内で分化させた2種類のヒト胎児由来組織片と手術で提供されたヒト成人白色脂肪組織をDNAマイクロアレイにて、発現遺伝子を比較検討した。胎児の肋骨周辺から分化した組織は、褐色脂肪組織のマーカーのUCP1(uncoupling protein1)、PGC1(PPARγ coactivator 1)、ミトコンドリアマーカー遺伝子の発現が劇的に増加しており、ヒト褐色脂肪組織であると考えられた。これらの結果は、ヒト胎児の肋骨付近に褐色脂肪組織に分化する細胞が存在しており、SCIDマウスに移植後、マウス体内ヒト褐色脂肪組織に分化・増殖したことを示唆する。ヒト褐色脂肪組織と、ヒト皮下脂肪組織のDNAマイクロアレイ解析による比較を行い、シグナル配列を有する新規のヒト褐色脂肪組織由来アディポサイトカインの候補をいくつか同定した。今後、これらの因子の体内でのエネルギー代謝におよぼす機能を解明する。
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