研究分担者 |
清水 洋 九州大学, 理学研究院, 教授 (50178985)
宮町 宏樹 鹿児島大学, 理工学研究科, 教授 (30182041)
中道 治久 名古屋大学, 環境学研究科, 助教 (00420373)
大久保 修平 東京大学, 地震研究所, 教授 (30152078)
森田 裕一 東京大学, 地震研究所, 教授 (30220073)
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研究概要 |
霧島山新燃岳では,2011年1月19日に小規模な噴火が始まり,26日午後からは準プリニー式噴火を3回繰り返した。 その後,溶岩が出現し,1月31日まで火口全体を埋めるまでに成長した。2月1日以降は小規模なブルカノ式噴火を繰り返し,頻度は次第に減少しつつも継続した。新燃岳の本格的なマグマ噴火は1716~17年以来,約300年ぶりの現象であり,噴火間隔の長い火山の噴火現象の発生や推移を理解する上で,今回の噴火過程の解明は重要である。本研究では,噴火活動とそれに伴う諸現象を緊急に研究するため,以下の4つの項目に分けて,2011年2月より研究を開始した。 1)火口近傍における観測による火口及び火道浅部構造・状況の調査。2)広域地殻変動・地震観測・地球電磁気観測によるマグマ蓄積系の調査。3)火山灰・火山ガス調査による噴出物成分調査。4)降灰域での土石流危険度調査。 その結果,マグマの蓄積が新燃岳の北西約7km地下約10kmにおいて,2006年から進行し,その後加速したことが明らかとなり,周辺地域の地震活動も同様に活発化していたことが示された。ブルカノ式噴火期に観測された火山性微動波形解析からは,ほとんどの火山性微動が火口直下での増減圧を起源とするが,マグマ溜まりと火口を結ぶ火道から到来するものも存在した。ブルカノ式噴には,火口直下のマグマの発泡を示唆する山体浅部の膨張・火山性地震回数増加が先行し,同時に,マグマ溜まりの一時的増圧を示す重力変化も捉えられた。噴火の推移を予測する噴火シナリオを作成し,噴火の進行とともに更新した。噴火のマグマは約300年の噴火と良く似た安山岩質のもので,噴火の前にマグマ混合が起こっていたことが示された。今後も継続中の噴火を総合的に観測し,噴火シナリオにおける噴火事象分岐のメカニズムを理解することが火山学的にも防災上でも重要である。
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