分布状況が全く分かっていない10㎝以下の低軌道の宇宙デブリの革新的な観測技術を開発した。宇宙デブリ問題は人類の宇宙活動を安定的に継続するうえで解決していかなくてはいけない課題である。これまでレーダーでの観測が主流であった低軌道の宇宙デブリに対しより位置決定精度や検出感度の高い光学センサを使った観測技術を開発している。外国人特別研究員と議論を重ね、画像で線状に写りこむ低軌道デブリの軌跡をハフ変換及びこれまでJAXAで開発してきたFPGAによる高速画像処理技術を応用し、より高速の解析技術を確立すべくGPU計算機を利用した解析パイプラインの構築を実施した。1枚の画像に線状に写りこむ軌跡に対し、1画素レベルで同じ画像を移動方向に重ねる操作を繰り返すことにより、軌跡の方向にこの操作を実施したときに信号雑音比が向上するというアルゴリズムを開発した。これによりこれまでより10倍程度の解析時間の高速化を実現できた。これにより毎秒100枚程度で画像を取得するCMOSカメラからの画像データをリアルタイムで解析することが可能になる。また、JAXAが豪州Siding Spring天文台で運用している遠隔観測施設における解析パイプラインにGPU計算機を導入、これまでFPGAで12時間程度かかっておいた低軌道デブリの解析時間を3時間程度に短縮し、ほぼリアルタイムでの解析を実現した。また、これに伴い、解析で発見した未カタログの低軌道物体の追跡観測が可能になると判断、物体が1周回回ってきたときの観測が実施できる豪州西側に第二の遠隔観測施設を進めるべく現地Zadko天文台と交渉を実施、独自の観測装置及び解析計算機を導入し正常に動作することを確認した。これにより2局において未カタログ低軌道物体の観測、追跡体制を整えた。
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