持続可能で効率的な紫外(UV)光の生成は、クリーンエネルギーの創出に非常に重要である。高エネルギー紫外線は、光触媒、太陽光発電、水素生成、CO2削減、水の分解や廃水処理などの重要な光化学プロセスなど、クリーンエネルギー研究分野の多彩な用途に有用である。そのためこれまでにもさまざまな手法で紫外線を発生させる試みがなされてきた。しかし、従来の手法では環境への負荷が高く、効率も低いという問題があった。 そこで本研究では、低エネルギーの可視光を用いて高エネルギーの紫外線を生成するフォトン・アップコンバージョンについて検討を行った。 可視光で増感でき紫外域に高効率な発光を示す新規な発光性分子の設計と合成を行った。簿骨格としてベンゼン環にフラン環が縮環したBDSを用い、更にエネルギー準位の調整のためにトリイソプロピルシリルエチニル(TIPS)基を修飾したTIPS-BDSを合成した。TIPS-BDSは多段階のステップにより合成し、カラムを用いた精製を行った。得られた生成物は1H-NMR、13C-NMRによって同定した。基本的な光学的研究として、UV-Vis吸収、定常蛍光、時間分解寿命、量子収率測定を行い、紫外域に高い蛍光量子収率(MeCN中で74%)を示す優れた発光体であることが分かった。イリジウム錯体と組み合わせることでTIPS-BDSは可視光から紫外光へのアップコンバージョンを示し、その効率は22.5%と非常に高いことが分かった。この効率はこれまで報告された中でもトップクラスであり、極めて優れた新規アップコンバージョン材料の開発に成功した。
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