今までの有限要素解析の主な役割は,設計や設計基準に従う安全性の評価に重点が置かれている.一方で,損傷予測のような維持管理のためには,センサや点検情報を活かした実構造物の現状をそのまま再現できる解析モデルが必要になる.外国人特別研究員との共同研究は,データと物理モデルの融合による新し構造物の解析手法および橋梁ヘルスモニタリン手法の提案である.すなわち,土木構造物の管理において重要な役割を果たす「物理情報に基づく機械学習による橋梁ヘルスモニタリング」に関わる研究である.具体的には,土木構造物の非線形領域の挙動の逆解析までを可能にするモデル構築に,物理法則の支配方程式をニューラルネットワークによって重み付けを決めて,支配方程式の解を提供するPhysics-informed Neural Network (PINN)やExact Dirichlet boundary condition PINN (EPINN)の適用性について検討を行った. 受け入れ研究者は「デジタルツインや橋梁ヘルスモニタリングにおける喫緊の解決すべき課題設定」,「妥当性検証のための数値シミュレーションと実験」,「構造動力学問題への適用」を,外国人特別研究員は「PINNとEPINNの適用性の検討」,「FNO(Fourier Neural Operator)による橋梁の動的応答の予測と異常検知への展開」,「High Performance Computing Infra (HPCI)での物理情報に基づく機械学習の実現アルゴリズムと運用方法検討」を担当した. 当初は2ヵ年にわたる共同研究の予定だったが,香港大学のAssistant Professorとして採用されることになり,7ヶ月の共同研究にとどまったが,EPINNとFNOの適用可能性を明らかにし,関連成果を権威ある国際ジャーナルに2編を投稿中である.
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