研究実績の概要 |
癌幹細胞(CSC)は悪性腫瘍の治療抵抗性と再発の根源であり治療標的とされている. 我々は, CSCの維持/分化/悪性化の分子機構と標的分子を明らかにするため, 種々の腫瘍からCSC樹立法を確立し, 独自の融合プロテオミクスによって, 細胞内キナーゼやプロテアーゼの多くが, CSC分化スイッチングの際に大きく変動することを見出した. キナーゼとプロテアーゼの癌特異的なクロストークは, 有効な治療標的として近年大きく注目されている. 本研究では, 悪性神経膠芽腫幹細胞(GSCs)を用いてリン酸化プロテオミクスHAMMOC法とN-Terminomics(プロテアーゼ網羅解析)法とグローバルLFQ法を融合的に最適化し, 経時的変動を伴うタンパク質リン酸化と分解部位の全情報をプロファイル化し, キナーゼとプロテアーゼのクロストークによる活性化ネッ トワークを抽出し, これらの治療標的としての可能性を検証しようとした。 悪性神経膠芽腫細胞株と患者組織から樹立した6クローンのGSCを用いて、悪性分化誘導有/無の経時的変化(4 point)を各 4 replicateを調製し、これら各々より、細胞タンパク質可溶化2条件(Urea Base(核抽出)とPTSbase(膜抽出))で前処理を行い、各々高感度StageTip-baseによるHAMMOC法と電荷媒介位置選択法で濃縮し、高感度nanoLC-MSMSにて網羅的分子同定および定量解析の最適化を行った。グリオーマ分化過程に共通して動的変化するプロテアーゼ/キナーゼ特定法を検討し、特にGSCにおいて特異的に活性化するキナーゼおよびプロテアーゼ群および、それらの基質となるタンパク質群の抽出に一部成功した。更なる検証実験が必要であるが、これらの阻害剤がGSCに有効である可能性がある。
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