研究課題/領域番号 |
22F31344
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
千住 智信 琉球大学, 工学部, 教授 (40206660)
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研究分担者 |
HOWLADER HARUN OR RASHID 琉球大学, 工学部, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2022-09-28 – 2024-03-31
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キーワード | カーボンニュートラル |
研究実績の概要 |
カーボンニュートラル実現のためには再生可能エネルギーを大量に導入することが求められている。風力発電は季節風が吹く時期に大量の発電を行うが夏季のような風力エネルギーが弱い時期は発電電力が期待できない。太陽光発電では晴天の日中に発電電力が大きいが夜間や雨天の際には発電電力が期待できない。以上のような理由により発電電力が必要な時に必要な量だけ発電電力を期待する事は非常に困難である。このため、再生可能エネルギーを大規模に導入してカーボンニュートラルを実現するためには大容量のエネルギー貯蔵装置を構築し、再生可能エネルギーの発電電力と電力需要を適切に需給制御することが求められる。 受給調整を行う手法は色々存在する。代表的な例として、①デマンドレスポンス、②蓄電池、③水素貯蔵、④揚水発電所、⑤電気自動車、⑥蓄熱(冷熱、温熱)が報告されている。①のデマンドレスポンスは需要家機器を制御する必要があるため、需要家の快適性を損なう可能性があるため、需要家の自由度を制限する事になる。②は高価な蓄電池を設置する必要がある。③は需要家が気軽に導入できる技術ではなく、法的な規制が多数存在する。④はこれまでも大規模な揚水発電所は建設されているが、導入可能な適地は殆ど存在しない。⑤は導入数が少なく、系統の受給調整は見込めない状況である。⑥は電気として利用を考えている需要家への導入は困難である。 本研究では、今後蓄電池の価格が大きく低下する事を予測しており、小規模な蓄電池を広範囲に束ね集中制御することにより仮想発電所(VPP)として受給調整能力を付与する事を考えた。仮想発電所は大型火力発電所の運用を最適化する事を考え、発電機起動停止計画問題として定式化を行った。また、大型火力機を含む運用コストを最小化するための仮想発電所の運用方法を明らかにし、全体の運用コストを最小化することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
再生可能エネルギーを有効活用するための手法として系統全体の柔軟性を利用することが重要である。今回注目したデバイスは蓄電池である。蓄電池のコストはかなり低下していて以前より電力系統へ導入されている。また、電気自動車へ導入されている蓄電池も仮想発電所の蓄電デバイスとして利用可能である。さらに、太陽光発電設備を導入している住宅やビルにおいても買電量を減少して電気料金を低下するために小容量の蓄電池を導入されている。近年では更なる蓄電池の価格低下を目的とした技術開発が実施されており、鉄ー空気電池はリチウムイオン電池の数分の一の価格になることが予想されている。 本研究で導入された大型火力発電機と仮想発電所の協調運転により発電所では発電が可能であったが、仮想発電所は発電も可能であるが、電力の消費も可能であることから電力調整能力が格段に向上する。小規模な蓄電池であっても多数の蓄電池を情報通信技術や人工知能の技術により仮想発電所を構成することで電力供給コストの大幅な削減が可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
仮想発電所では基本的に電気エネルギーの売電・買電を考慮した。しかし、実際の仮想発電所では、熱エネルギー(例えば、温熱や冷熱)の利用が通常必要である。従って、高価な蓄電池のみを考えて電力の融通を行うのみでなく、熱エネルギーを蓄熱タンク等を利用して貯蔵・利用する事を検討する必要がある。 仮想発電所の需給調整を行うためには仮想発電所を構成する様々な構成要素を利用する必要がある。例えば電気自動車に搭載されている蓄電池の充放電、分散型電源の出力調整、リアルタイムプライシングを適用したデマンドレスポンスによる需給調整、水の電気分解を利用した水素貯蔵、再生可能エネルギー機器の出力制御等である。電力需給調整機器を特別に導入することなく情報通信技術を用いてこれらの機器を一括制御することで全体最適化を低コストで実施可能である。 再生可能エネルギーの発電電力は通常予測技術を用いて最適に利用されるが、エネルギー利用量や再生可能エネルギーによる発電電力は予測された値から大きく外れる事がある。このような場合においてもエネルギーシステム全体の運用コストを最小化する必要があるため、モデル規範制御やロバスト最適化手法の適用が今後必要であるといえる。
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