研究課題/領域番号 |
22H00033
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
藤田 耕史 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (80303593)
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研究分担者 |
庭野 匡思 気象庁気象研究所, 気象予報研究部, 主任研究官 (10515026)
齋藤 冬樹 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境部門(環境変動予測研究センター), 研究員 (60396942)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | アジア高山域 / ヒマラヤ / 氷河 / 氷体温度 |
研究実績の概要 |
2022年度は、アジアにおける新型コロナの感染状況が改善したことから、現地観測計画を前倒して実施した。6月にモンゴルのポターニン氷河に温度ロガーを設置したが、9月に回収したところ、ロガーが故障しておりデータが取得できていなかった。原因として落雷の影響が考えられたため、対策を検討している。秋シーズンにネパールのトランバウ・トラカルディン氷河での現地観測を実施し、質量収支観測網の整備、新規自動気象計の設置、既存の自動気象計からのデータ回収とメンテナンス、温度ロガーの設置をおこなった。中国の共同研究者にチベットの氷河に温度ロガーを設置してもらうための交渉をおこない、温度ロガー一式を送付した(観測は2023年度春シーズンに実施予定)。 気象研究所で開発された領域気候モデル(NHM-SMAP)をアジア高山域に適用するための準備を進め、急峻地形上でも5 kmという高い解像度で運用することが可能であることを確認した。地表面状態の設定について検討を進め、最新の氷河インベントリを用いて氷河の占める面積割合を与えることで対応する方針を決めた。熱力学流動モデルの小さいスケールの氷河への適用について、先行研究と同じ条件での計算が可能かどうかについて検討を進めた。 アジア高山域で取得されている現地観測データについて、中国やスイスの共同研究者とコンタクトをとり、データ共有を進めた。 領域気候モデルの改良に関する研究論文の他、アジア高山域の氷河変動と降水メカニズムに関する研究論文を出版した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2022年6月にモンゴルのポターニン氷河の涵養域にて温度センサーと気温センサーを設置した。同年9月にデータ回収のために再訪したところ、ロガーが完全に故障しており、データ取得ができなかった。おそらく落雷が原因と考えられる。一方、申請時の計画では二年次に実施を予定していたネパールヒマラヤ、ロールワリン地域における自動気象計や温度ロガーの設置を初年度に実施することができ、観測を前倒して実施できている。共同研究者に設置を依頼した、ネパールヒマラヤ、ヒドゥンバレーは積雪の状況が悪く、観測チームが現地に到達することができなかった。 中国科学院・チベット高原研究所の共同研究者にチベット高原の氷河への温度センサーとロガーの設置を依頼し、快諾を得、必要となるセンサーとロガーを送付した。 領域気候モデルについては、すでにアジア高山域への適用が可能となり、過去40年分の計算のうち30年分が終了しており、当初の計画よりも進展している。
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今後の研究の推進方策 |
計画通りに遂行する予定。具体的には、6月にモンゴル、ポターニン氷河へ追加の温度センサーの設置とロガーによる記録を試みる。氷河上ではアースが取れないために、落雷への対策手段がないことが懸案である。同時期に、中国の共同研究者がチベット高原、ドンケマディ氷河に温度センサーとロガーを設置する予定である。9月以降の秋シーズンには、ネパールヒマラヤのヒドゥンバレー地域とロールワリン地域にて、温度センサーとロガーの設置(ヒドゥンバレー)とデータ回収(ロールワリン)を実施する。 領域気候モデルによるアジア高山域の高解像度(5km)の再計算を進め、1980年以降40年間のデータを完成させる。現地観測データによる検証をおこなったうえで、トレンド解析などを進め、氷河の質量収支にとって重要な、気温、降水、降雪の長期変化を明らかにする。 氷河流動モデルの構築を進め、まずは先行研究のデータがあるネパールヒマラヤ、ヒドゥンバレーの氷河の再現を試みる。
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