研究課題/領域番号 |
22H00042
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
手嶋 豊 神戸大学, 法学研究科, 教授 (90197781)
|
研究分担者 |
櫻庭 涼子 一橋大学, 大学院法学研究科, 教授 (20362808)
網谷 龍介 津田塾大学, 学芸学部, 教授 (40251433)
淺野 博宣 神戸大学, 法学研究科, 教授 (40261945)
関根 由紀 神戸大学, 法学研究科, 教授 (60379493)
安井 宏樹 神戸大学, 法学研究科, 教授 (60396695)
飯田 文雄 神戸大学, 法学研究科, 教授 (70184356)
浦野 由紀子 神戸大学, 法学研究科, 教授 (70309417)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | 少子高齢化社会 / 社会福祉 / 国際比較 |
研究実績の概要 |
本研究は、平均余命の伸長と死亡率の低下による高齢化と少子化という、医療の進歩等と社会の進展によって人口構造の変化が進んでいる先進諸国が直面し、又はしつつある、超高齢社会における福祉の課題とその選択肢について、法学・政治学の協働体制に基づいて、諸外国での調査と多国間及び歴史的な比較を行うことを通じ、法政策学的な分析を行い、課題解決に向けた総合的提言をなすことを目的とする。日本は少子高齢化が世界で最速で進んでいる「少子高齢化先進国」であるが、日本に限らず、少子高齢化が進む先進諸国では、高齢者福祉の問題には「ニーズ対応」と「市民参加」が共通して見受けられる状況にあり、本研究では高齢者福祉を取巻く社会状況の変化の分析に際し、「多文化化」「スマート化」「ナッジ化」という3つの観点を設定して、福祉政策の3分野である医療・介護・年金を中心とした課題に取り組んでいる。 研究2年目にあたる本年度も研究課題に関し、他領域からの相互の情報提供と研究方針の確認とを主たる内容とする全体研究会と、研究分担者がそれぞれの研究分野に基づいて行う個別領域の研究会とを開催して意見を交換し、本件課題に関する理解と関連情報を獲得することに鋭意努めた。その結果、上記分析の観点は有効であることが認められるが、分析を具体的提言につなげるための課題も明らかになりつつある。 コロナウィルス感染症の世界的な蔓延状況は大きく縮小したが、世界各地で紛争状況が発生・継続したりより深刻度を増すなど、本研究実施の前提条件である国際状況の安定についての見通しは、混とんさを増している印象であり、国外調査実施のハードルが、改めて高くなっているという様相が、本年度もみられた。しかしながら本研究において主たる対象とされている国については、こうした世界情勢の不安定化の影響が比較的小さかったことから、海外での文献調査も実施することができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題全体についての問題意識・目的は、分担研究者全員の参加による全体会議を通じて、分担者各人に十分に共有されており、従前よりも理解が深まっているものと解される。また、研究分担者各人については、それぞれ、自身の研究の成果として、論文の公表・国際会議を含む各種学会での研究発表、さらに単著・共著による、本研究課題に関連する課題の論稿を含む著書の刊行など、成果の公表は順調に行ってきている。 さらに、研究課題に関して、外国語文献を中心とした参照すべき資料の収集活動についても、大きな支障なく、進められてきている。 海外調査の実施については、コロナウィルス感染症の影響が小さくなってきた一方、軍事衝突等をめぐる社会の不安定化要素が世界各地で発生していることが当研究にも影響を及ぼす可能性はあるものの、これまでのところ、北米における文献調査や、欧州の研究者との意見交換などについては、順調に実施できている。 外国語による情報発信については、年度段階では作業が結実しなかった部分があるが、これは課題について、短信的な報告よりも、よりまとまった量と内容のものを予定しようという発展的な方向を目指したことに起因するのであり、方針の変更が主たる理由である。 以上の事情に鑑み、本研究は、おおむね順調に進展してきていると自己評価している。
|
今後の研究の推進方策 |
研究計画の第二期中間期から始まる本年度は、高度な情報伝達・処理能力を備えた新しい科学技術を福祉の諸局面で利活用する、福祉のスマート化により生じる諸問題を中心として、調査検討を進める。 福祉のスマート化は、福祉に従事する労働力の不足・偏在への対応と、福祉の経済的財源不足への対応という2つの局面に類型化することができ、それらに含まれる問題と課題を析出し整理することは、本研究にとって有益であり、本年度はその作業に注力する。その際には、①福祉のスマート化に関して、既に行われている理論的研究について、より広範に検討を加えること、②スマート化が必ずしも進んでおらず人的資源を中核として運用せざるを得ない医療・福祉の現場が抱え込んでいる諸課題と、スマート化の進展により解決可能な課題の析出、さらにスマート化の進展を促進し得る要素・要因の具体化・可視化、③医療・福祉領域へのロボット導入に伴う課題を分析する理論的研究の調査・実態調査の参照、④以上の調査・研究をもととして、福祉三政策分野で進められる諸改革の比較・福祉システム改革の比較を行い、スマート化が進んでいる福祉政策分野や国ごとの比較、時代状況を明らかにすることに努める。さらに、⑤スマート化に伴って生じたり新たな解決策が見通し得る諸問題群、例えば個人情報管理体制の整備や、多文化化によって生じる福祉関係者と福祉受益者との意思疎通の困難さの増大と解決などについて、これらを類型化することと対応策の各国比較についても検討・考察を行う。 本年度は、上記のような研究資料の蓄積継続に加え、研究成果を発信し他国からのフィードバックを求めるなどの取組みも進めるため、研究分担者を中心として、海外の研究者も執筆者に含めた、欧文による学術論文集を、本年度内に刊行することを目指す。
|