研究課題/領域番号 |
22H00086
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
高橋 伸幸 北海道大学, 文学研究院, 教授 (80333582)
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研究分担者 |
真島 理恵 北海道医療大学, 心理科学部, 講師 (30509162)
瀧本 彩加 北海道大学, 文学研究院, 准教授 (40726832)
清成 透子 青山学院大学, 社会情報学部, 教授 (60555176)
田村 光平 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 准教授 (60725274)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 協力 / 互恵性 / 評判 / 利他性 |
研究実績の概要 |
本研究は、一般交換において用いられる評判を決定する情報統合プロセスを新たに提唱することを最終目標とする。そのため、理論班は、善いことも悪いことも含む他者に関する多様な情報をいかに集約して評判を形成するかについて、モデル研究を行い、相互協力状態を達成可能な情報統合プロセスを理論的に検討する。ヒト実証研究班は、実験室実験を行い、実際にヒトがどのように他者に関する情報を統合して行動を決定するのかを検討する。他種実証研究班は、ヒト以外の種において対応する実験を行う。もし、ヒトが用いる情報統合プロセスが他種とは異なるのであれば、大規模な相互協力というヒトの社会特有の現象に対する新たな説明の候補を提示できる。 初年度は、複数の情報統合プロセス候補を検討するためのミーティングを複数回行った。理論班はまず、間接互恵性に関する最初のモデル研究を再現したが、その後、候補となる新たな情報統合プロセス候補に関する数理解析とシミュレーションを行う段階で、いくつかの問題点が見いだされた。ヒト実証研究班と他種実証研究班は、ヒトと他種を比較可能な形にするにはどのような実験手法が適切かの検討を開始したが、未だ適切なデザインを決定するには至っていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「情けは人のためならず」という諺が表しているように、社会は助け合いにより成り立っている。この助け合いの輪から非協力者を排除することにより、人類は相互協力を達成してきたと考えられる。しかし、排除すべき悪人を見極めることは、モデル上は簡単だが、現実にはそれほど簡単ではない。本研究では、これまでモデル上で過度に単純化されてきた、非協力者を排除するための印象形成プロセスに焦点を当て、一人の行為者に関する複数の情報が入手可能な場合、それらをどのように統合してその行為者に対する印象を決定し、排除すべき非協力者であると見なすのが適応的になるのかを理論的に明らかにすることを第一の目的としている。そして、実際に人々が用いる印象形成プロセスが理論的に適応的なプロセスと一致するかどうかを実証的に明らかにすることを第二の目的としている。更に、人間以外の種において、どのような印象形成プロセスが用いられているのかを実証的に明らかにすることを第三の目的としている。 初年度において、理論班はまず、間接互恵性に関する最初のモデル研究をオリジナルの研究とは異なる環境において再現することに成功した。その後、相互協力を達成可能な情報統合プロセスの候補に関する数理解析とシミュレーションを行う段階で、いくつかの検討点が見いだされたため、それらについてはメンバー全員で議論が続いている。その間、ヒトと他種の実証研究班は、ヒトと他種を比較可能な形にするために適切な実験手法の検討を開始したが、未だ適切なデザインを決定するには至っていないため、ヒト実証研究班が先行して実験室実験を行い、実際にどのような情報統合プロセスをヒトは用いているのかを明らかにし、それを他の班にフィードバックするという方針に変更した。
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今後の研究の推進方策 |
理論班は、2年目は1年目に見いだされた問題点を解決し、数理解析とシミュレーションを行う予定である。強化学習などの各情報統合プロセス候補が社会全体の協力状態にもたらす帰結を検討することにより、情報統合という頭の中で起きているマイクロなプロセスが多数の行為者間における行動の相互規定関係を通じてマクロな社会状態を如何に作り出すのかを明らかにすることができる。ヒト実証研究班は、2年目にヒトを対象とした実験を行い、実際にどのような情報統合プロセスが用いられているのかを検討し、それを理論班の研究にフィードバックすることを目指す。他種実証研究班はその成果を見つつ、他種でヒトと比較可能な実験デザインを構築することを目指す。
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