研究課題/領域番号 |
22H00087
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
松宮 一道 東北大学, 情報科学研究科, 教授 (90395103)
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研究分担者 |
伊師 華江 仙台高等専門学校, 総合工学科, 准教授 (10435406)
立花 良 東北大学, 情報科学研究科, 助教 (30866398)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 身体感覚 |
研究実績の概要 |
本研究では、身体感覚に備わった他者との関係に関する情報を「身体に埋め込まれた社会性」と呼び、その実証的理解を前進させることである。具体的には、身体を介した相互作用から身体感覚の拡がりを評価し、これらの拡がりと人の心理状態との関連と、その背後にあるメカニズムを解明することである。しかし、従来の実証研究の多くは、人と人の身体反応の同期を示す現象論に留まっており、身体感覚の拡がりを評価しなかった。そこで、当該年度では、身体感覚の柔軟な変化を捉えるために、他者観察時の主観的身体形状計測手法を開発することを目的とした。これまでの研究代表者の知見を用いて、主観的身体形状を計測するための触覚刺激装置を開発した。触覚刺激の呈示には厳密な時間制御が求められるが、我々が開発した装置はわずか10ミリ秒の遅延で触覚刺激を呈示できる。さらに、触覚振動の時間周波数を幅広く変えることができ、刺激する身体部位の場所をミリ単位で厳密に操作できるようにした。そして、今回新たに開発した触覚刺激装置を使って、ヘッドマウントディスプレイを装着した実験参加者が仮想空間内で他者を観察しながら実験参加者の身体部位が刺激される実験環境を構築した。ヘッドマウントディスプレイには、他者のアバターを呈示し、当該年度に新規に購入したモーションキャプチャシステムを使って、違和感のない自然な動きで他者アバターの身体部位を動かすことができるようになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、当初の予定通り、新規にモーションキャプチャシステムを導入し、現有のヘッドマウントディスプレイと新たに開発した触覚刺激装置を併用する実験環境を構築した。主観的身体形状をリアルタイムに計測するための手法の開発に多くの時間を費やしたが、その基本特性の精査は終了した。現在は、モーションキャプチャシステムを使って、他者の動きを制御する実験環境の構築に着手し、他者の動きと主観的身体形状との関連を調べるための詳細な実験を計画中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、どのような他者の動きが主観的身体形状に影響を与えるのかを明らかにしていく。他者の動きには、様々なバリエーションがあり得るため、社会心理学や認知心理学などの知見を参考にしながら、身体感覚の拡がりに影響を与える他者の動きを探索する。また、主観的身体形状の計測と同時に、他者との関係に関する心理要素の抽出に取り組む予定である。
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備考 |
研究代表者の松宮が令和5年度科学技術分野の文部科学大臣表彰 科学技術賞(研究部門)を受賞
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