研究実績の概要 |
次世代の情報化社会に向けて、人と親和性が高く、限られた種類の安価な元素で作られる環境調和型の有機エレクトロニクスに注目が集まっている。現在、有機エレクトロニクスの素材には限られた高分子伝導体が用いられているが、その構造的な乱れのために伝導機構の十分な理解、伝導性制御には至っておらず、物性研究からの貢献が強く求められている。 本研究では、実用性はあるが伝導機構解明、精密な物性制御が難しい高分子伝導体と、構造―物性相関研究による伝導機構解明は行えるが、物性制御範囲が限られている低分子伝導体の中間に位置し、双方の利点と知見が取り込めるオリゴマー伝導体を対象とする。そして、オリゴマー伝導体の開発、伝導機構の解明、精密な伝導性制御、ひいては無機金属に迫る室温最高伝導性目指した「電子相関系オリゴマー分子性伝導体の開発と精密伝導性制御」を目的としている。 2022年度は、オリゴマー分子性伝導体の開発として、オリゴマー分子伸長効果を調査した。オリゴマー分子の伸長は電子共役長の増大に該当し、その結果、キャリア電子間クーロン反発力(U)が減少して、電子相関パラメータ(U/W)をユニバーサルに変化させることができる。そして、オリゴマー4量体である4PS(P-S-S-P, P: 3,4-(2,2-3,4-(2',2'-dimethylpropylenedioxy)thiophene), S:3,4-ethylenedithiothiophene)を溶解性と光安定性の課題を凌駕して合成し、そのドープした塩4PS(PF6)1.2(solvent)の単結晶を作製したところ、室温電度が36 Scm-1で、室温以上で金属となるオリゴマー塩であることを明らかにした。
|