研究実績の概要 |
前年度に引き続き,光核反応励起関数の検証実験を行った。東北大学電子光理学研究センターの大強度電子線形加速器で15-50MeVに加速された電子をエネルギー分散部に設置しているスリットでエネルギー選別し,光核反応収率測定を行った。今年度は制動放射線照射のみでなく電子照射も行い,仮想光子の影響も検討した。現在,これらのデータの解析を進めている。 速中性子反応についても,前年度同様に検証実験を行った。東北大学サイクロトロン・ラジオアイソトープセンターにて,前年度までのNi, Cu, Zn, Mo, Auに加え,Ti, Zr, In, Wに対して,25, 30 MeVの重陽子で生成した速中性子を照射し,積分断面積を取得した。文献値を再現するようパラメータ調整した理論計算TENDLとの比較だけでなく,理論計算の精度向上のため,純粋な理論計算TALYSとの比較も行った。 また,単体をターゲットとすることが難しい元素および濃縮同位体を対象とした実験に向け,大面積化合物ターゲット調製法を確立するために,天然同位体組成のカルシウムを用いて分子電着法の開発を引き続き行った。硝酸カルシウムを2-プロパノールに溶解し,モレキュラーシーブスで十分脱水したのち,300 V,30分間電着することで,95%以上の効率で厚さ280 μg/cm2程度の直径25 mmのターゲットが得られた。この電着条件で2度電着を繰り返すことで,剥がれなどなく厚さを500 μg/cm2程度にすることができた。 さらに,極微量しか取り扱えないラジウム等の励起関数検証法も検討した。Ra-226(γ,n)反応は核医学で注目されているAc-225を製造する方法の一つであり,実際に30-50 MeVにおける反応収率のデータも取得することができた。
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