研究実績の概要 |
原子核を構成する陽子と中性子が魔法数という数字(Z, N=2,8,20,28,50,82,126)を取るときに特に安定になる(固く束縛する)事が知られている。 Z=20のカルシウム同位体では魔法数を跨ぐN=28の前後で半径が異常に大きくなる現象が我々自身によってみつかっているがZ=50の錫(スズ)同位体でも魔法数を跨ぐN=82の前後で半径の異常増大が観測されるかがポイントである。もし見つかれば3体LS相互作用の効果かと期待される。半径の異常増大を確認する事で3体LS相互作用の効果を証明する。この3体LS相互作用の効果を探ることは喫緊の課題となっている。 具体的方法としては不安定同位体を含む 114-137Sn(錫・スズ) 原子核をビームとして用い理化学研究所の大型核破砕片生成分離装置(BIGRIPS)を使用して,相互作用断面積と一部未知(A=135-137)の荷電変化断面積との同時測定を統計精度1% にて行う。 その結果から, 核物質半径と陽子分布半径をグラウバー理論を援用してそれぞれ導出し中性子魔法数 N =82 を跨ぐ領域での核物質半径異常増大を見る事と114 -137Sn同位体の中性子スキン厚を誤差伝搬の精度で決定して, 非対称な核の状態方程式 (EOS) の対称エネルギー係数を決定する事が研究目的である。 ここでいう「中性子スキン」とは,中性子過剰な原子核において核の表面近傍に出 現する中性子分布のみで構成される層のことである。 このための相互作用断面積と荷電変化断面積との同時測定の準備を行った。
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