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2023 年度 実績報告書

重力波信号較正の高精度化

研究課題

研究課題/領域番号 22H00135
研究機関国立天文台

研究代表者

都丸 隆行  国立天文台, 重力波プロジェクト, 教授 (80391712)

研究分担者 山本 尚弘  東京大学, 宇宙線研究所, 助教 (00796237)
谷本 育律  大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 教授 (60311130)
森脇 喜紀  富山大学, 学術研究部理学系, 教授 (90270470)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2027-03-31
キーワード重力波 / キャリブレーション / 光パワー / 重力場変調
研究実績の概要

①干渉計応答の時間変動補正(東大宇宙線研・山本) :主干渉計伝達関数のリアルタイム補正プログラムは実装済みだが、実際のオプティカルゲインやアクチュエータ効率の変動補正ではハードウェア的に2つの干渉計アームの差動信号の安定性と感度が未だ不十分であるため、最大40%程度推定値が揺らいでしまう問題が残っている。KAGRAプロジェクトが能登半島沖地震でダメージを被ってしまったため、上記差動信号の安定化と低ノイズ化実現も先延ばしになってしまった。したがって、約40%の変動値推定精度向上は2024年度に持ち越しとなった。
②PCALレーザーパワー絶対値不定性の検証(富山大・森脇) :2023年5月に実施した国際共同観測O4aにおいて、PCALレーザーパワー推定値の不確かさ0.7%、PCALの絶対較正値の不確かさ0.8%を達成し、本研究におけるPCAL精度の目標値はすでに達成できた。レーザーパワー絶対値の較正作業では積分球型光検出器の入射角依存性や非線形性を特定し、東大および富山大の学生の修士論文・卒業論文にまとめるなど学生教育にも貢献できた。LIGO-Virgoとの国際共同研究による光パワー絶対値の相互較正は現在海外グループにおいて実施中で、富山大では日本で相互較正を実施するための測定装置の自動化を進めた。
③重力場変調式較正装置(GCAL)の開発(国立天文台・都丸、高エネ研・谷本) : 製作したGCAL部品の組み立てを実施し、GCAL 1号機はほぼ完成した。課題はローターに挿入するタングステン錘の重さ調整であり、加工が難しいことから方針を検討中である。また、GCALで発生する重力場変調信号を実験室で検証するためのセンサー開発も始めており、現在は捻れ振り子型センサーを開発中である。また、1号機の製作で分かった不具合の修正を進め、2号機の設計に反映させている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本科研費研究自身の進捗は概ね順調であるが、最終的にキャリブレーションシステムの統合運用を目指しているKAGRAプロジェクトは能登半島沖地震のダメージでスケジュールに影響が出ている。まず、KAGRAが予定していた第4期国際共同観測の第一フェーズ(O4a)には連星中性子星合体距離1.3Mpcの感度で予定通り1ヶ月ほど参加できた。この後、ハードウェアの修正、ノイズハンティング作業や主干渉計の安定化作業を続けてきたが、能登半島沖地震に見舞われ、深刻なダメージを受けてしまった。現在復旧を進めているもののスケジュールの見通しは立っていない状況である。このため、主干渉系応答関数のリアルタイム補正研究も足踏み状態にあるが、ソフトウェア等基本的なツールはすでに導入済みであるため、地震からの復旧作業終了後直ちに再開できる。
PCALの高精度化と運用は順調であり、すでに本科研費研究で目標とする精度は実現できた。LIGO-Virgo等との光パワー絶対値の相互較正も海外において検証実験が進んでおり、それが終わり次第富山大に検出器が送られる予定である。富山大では測定系の誤差を抑えるために自動で積分球型光検出器を入れ替えるシステムを構築し、試験を行っている。2024年度は富山大での検証が実現できる見込みである。
GCALの開発についても1号機の組み立てが終わり、おおよそ予定通りの進捗である。KAGRAのスケジュール遅れから、KAGRAへ実装した運用は科研費終了までに実現できない可能性があり、実験室での基本性能評価の検討を始めている。具体的には、捻れ振り子を用いたGCALの重力場変調信号の検証を検討している。また、1号機の課題を反映させた2号機の設計も進めており、2024年度には2号機も完成できる見込みである。
以上の通り、研究は概ね順調に進展していると言える。

今後の研究の推進方策

KAGRA全体のスケジュールは本科研費研究にも少なからず影響するため、まずはKAGRAの地震からの復旧を急ぐ必要がある。干渉計ハードウェアの安定化作業はまた一からやり直す必要があるが、これまでの経験を活かせるので比較的スムースに進められると考えている。干渉計の安定化により両アームの差動信号上でのPCALおよびコイルマグネットアクチュエーターの復調信号の積分時間を延ばすことができるので、オプティカルゲインおよびアクチュエータ効率の揺らぎを抑えることができると考えている。
PCALの光パワー絶対値評価は順調に進んでいるため、海外からの積分球型光検出器の到着を待って評価を進める予定である。この他、積分球の入射角依存性や経年変化など想定していなかった誤差が問題となる可能性もあるので、国際共同研究とは独立に積分球の評価を継続していく予定である。
GCALの開発では、実験室内で性能評価を実現できるように重力場変調信号を測定できるセンサーの開発を行う予定である。現在は捻り振り子を試験しているが、最近国立天文台においてRoberts Linkage(RL)と呼ばれる特殊な超低周波振り子の開発に成功したことから、RLをセンサーに応用することも検討する。また、現在のGCAL 1号機ではタングステン錘を装着していないため、錘の重さを0.1g程度に揃えたうえで装着することを目指す。最後に、1号機の経験を踏まえたうえで2号機の製作を行う予定である。
コロナなどのために国際共同観測のスケジュール自身が変更となり、本科研費研究終了までにO5が開始されない見込みとなったが、KAGRAのエンジニアリングラン等で、本研究による信号較正制度を実証していく計画である。

  • 研究成果

    (22件)

すべて 2024 2023 その他

すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 オープンアクセス 4件、 査読あり 1件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 7件) 備考 (3件)

  • [国際共同研究] LIGO Laboratory/NIST(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      LIGO Laboratory/NIST
  • [国際共同研究] EGO (Virgo)(イタリア)

    • 国名
      イタリア
    • 外国機関名
      EGO (Virgo)
  • [国際共同研究] 台湾中央大学/台湾中央研究院(その他の国・地域(台湾))

    • 国名
      その他の国・地域
    • 外国機関名
      台湾中央大学/台湾中央研究院
  • [雑誌論文] Calibration of the gravitational wave telescope KAGRA2023

    • 著者名/発表者名
      Dan Chen on behalf of the KAGRA collaboration
    • 雑誌名

      Proceedings of Science, 38th International Cosmic Ray Conference

      巻: 444 ページ: 1549

    • DOI

      10.22323/1.444.1549

    • オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Calibration of the integrating sphere for O4 in KAGRA gravitational wave telescope2023

    • 著者名/発表者名
      Shingo Fujii on behalf of the KAGRA collaboration
    • 雑誌名

      Proceedings of Science, 38th International Cosmic Ray Conference

      巻: 444 ページ: 1553

    • DOI

      10.22323/1.444.1553

    • オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Development of the Gravity Field Calibrator for KAGRA2023

    • 著者名/発表者名
      Rishabh Bajpai on behalf of the KAGRA collaboration
    • 雑誌名

      Proceedings of Science, 38th International Cosmic Ray Conference

      巻: 444 ページ: 1550

    • DOI

      10.22323/1.444.1550

    • オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Development of Advanced Photon Calibrator for KAGRA2023

    • 著者名/発表者名
      Y. Inoue, B.H. Hsieh, K.H. Chen, Y.K. Chu, K. Ito, C. Kozakai, T. Shishido, Y. T omigami, T. Akutsu, S. Haino, K. Izumi, T. Kajita, N. Kanda, C.S. Lin, F.K. Lin, Y. Moriwaki, W. Ogaki, H.F. Pang, T. Sawada, T. Tomaru, T. Suzuki, S. Tsuchida, T. Ushiba, T. Washimi, T. Yamamoto, T. Yokozawa
    • 雑誌名

      Review of Scientific Instruments

      巻: 94 ページ: 074502

    • DOI

      10.1063/5.0147888

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] Development status and plan of KAGRA calibration systems in the observation run O42024

    • 著者名/発表者名
      Dan Chen on behalf of the KAGRA collaboration
    • 学会等名
      日本物理学会
  • [学会発表] Calibration system of KAGRA, and the performance2024

    • 著者名/発表者名
      Dan Chen on behalf of the KAGRA collaboration
    • 学会等名
      日本天文学会
  • [学会発表] KAGRA CAL status2024

    • 著者名/発表者名
      Dan Chen
    • 学会等名
      LIGO-Virgo-KAGRA meeting
    • 国際学会
  • [学会発表] Reducing calibration uncertainty in the photon calibration system for KAGRA2023

    • 著者名/発表者名
      Shingo Fujii, KAGRA collaboration
    • 学会等名
      KAGRA f2f meeting
  • [学会発表] KAGRA collaboration: Calibration of the integrating sphere in O4 at the gravitational wave telescope KAGRA2023

    • 著者名/発表者名
      Shingo Fujii, KAGRA collaboration
    • 学会等名
      日本物理学会
  • [学会発表] Calibration of the KAGRA gravitational wave telescope during observation run O4a and preparation for O4b2023

    • 著者名/発表者名
      Dan Chen, KAGRA collaboration
    • 学会等名
      日本物理学会
  • [学会発表] Pcal uncertainty estimation for KAGRA O4a2023

    • 著者名/発表者名
      Dan Chen
    • 学会等名
      LIGO-Virgo-KAGRA meeting
    • 国際学会
  • [学会発表] Photon Calibration System for KAGRA O42023

    • 著者名/発表者名
      Dan Chen
    • 学会等名
      LIGO-Virgo-KAGRA meeting
    • 国際学会
  • [学会発表] Calibration of the integrating sphere for O4 in KAGRA2023

    • 著者名/発表者名
      Shingo Fujii
    • 学会等名
      LIGO-Virgo-KAGRA meeting
    • 国際学会
  • [学会発表] Calibration of the gravitational wave telescope KAGRA2023

    • 著者名/発表者名
      Dan Chen on behalf of the KAGRA collaboration
    • 学会等名
      38th International Cosmic Ray Conference
    • 国際学会
  • [学会発表] Calibration of the integrating sphere for O4 in KAGRA gravitational wave telescope2023

    • 著者名/発表者名
      Shingo Fujii on behalf of the KAGRA collaboration
    • 学会等名
      38th International Cosmic Ray Conference
    • 国際学会
  • [学会発表] Development of the Gravity Field Calibrator for KAGRA2023

    • 著者名/発表者名
      Rishabh Bajpai on behalf of the KAGRA collaboration
    • 学会等名
      38th International Cosmic Ray Conference
    • 国際学会
  • [備考] 国立天文台重力波プロジェクト

    • URL

      https://gwpo.nao.ac.jp

  • [備考] KAGRA

    • URL

      https://gwcenter.icrr.u-tokyo.ac.jp

  • [備考] 富山大学理学部森脇教授

    • URL

      http://www.sci.u-toyama.ac.jp/study/research/03_moriwaki.html

URL: 

公開日: 2024-12-25  

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