研究課題/領域番号 |
22H00145
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
榎戸 輝揚 京都大学, 理学研究科, 准教授 (20748123)
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研究分担者 |
中澤 知洋 名古屋大学, 素粒子宇宙起源研究所, 准教授 (50342621)
一方井 祐子 金沢大学, 地域創造学系, 准教授 (00709214)
森本 健志 近畿大学, 理工学部, 教授 (60403169)
鴨川 仁 静岡県立大学, その他部局等, 特任教授 (00329111)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | シチズンサイエンス / 雷雲プロジェクト / Gamma-ray glow / 雷雲ガンマ線 / 高エネルギー大気物理学 / 放射線測定 / 雷放電 |
研究実績の概要 |
雷雲内の強い電場により電子が相対論的に加速して地上に降り注ぐガンマ線(Gamma-ray glow もしくは雷雲ガンマ線)を、シチズンサイエンスも活用した「雷雲プロジェクト」として観測する研究である。2023年度の冬季にも、金沢に小型の放射線モニタ「コガモ (Compact Gamma-ray Monitor)」を70台ほど設置して測定を行うとともに、関係する理論や他測定グループとの共同研究も行ってきた。2023年度の特筆する成果として、雷雲ガンマ線(gamma-ray glow)を複数のコガモで検出し、雷放電の瞬間にガンマ線が途絶した2021年のイベントを、国際学術誌に出版できた(Tsurumi, Enoto, Ikkatai, et al., "Citizen Science Observation of a Gamma-Ray Glow Associated With the Initiation of a Lightning Flash", GRL, 2023)。このイベントでは雷放電のはじまり(トリガー)の位置をFALMAやDALMAなどの電波観測で位置精度よく検出した。その位置が雷雲ガンマ線の照射領域の内部もしくは近傍であり、強い電場による電子加速と雷の発生の関係性について議論を行った。この成果は、「シチズンサイエンスで挑む雷の謎―宇宙線と雷雲の相互作用は、雷の始まりに影響を与えるのか?―」として京都大学を中心にプレスリリースを行った(https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2023-07-10-1)。この他にも、雷雲ガンマ線の発生に迫るモンテカルロシミュレーションを用いた理論研究として、Diniz et al. GRL , 2023 なども出版し、他にも関連する共著論文にも参加した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の成果として、国際学術誌 Geophysical Research Letters に複数の成果を出版することができ、国内外からも研究プロジェクトが注目されている。たとえば、榎戸は宇宙線研究所乗鞍観測所70周年でも記念講演「雷と雷雲の高エネルギー大気物理学の進展」として発表を行った。また、新聞等のメディアでも取り上げられている。たとえば、京都新聞2023年8月5日の夕刊一面で「科学発展の鍵は『あなた』、『シチズンサイエンス』京滋で広がる、市民がデータ収集、大発見も」として雷雲プロジェクトが掲載され、プレスリリースも複数の新聞に取り上げられた。また、本プロジェクトを推進している中心的な大学院生の発表は、日本地球惑星科学連合(JpGU)の大気水圏科学セッションで優秀発表賞を受賞している。シチズンサイエンス「雷雲プロジェクト」では研究者に限らず、熱心な市民サポーターも現れており、今後はより連携を深めていくことが大切と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度もコガモを用いたシチズンサイエンス「雷雲プロジェクト」を継続するとともに、より市民サポーターに参加してもらえるような枠組みを充実させていくことも大切と考え、交流イベントも企画したい。これまで研究者チームのある京都大学を中心に測定器のメンテナンスを進めてきたが、今後は観測場所である金沢大学にシチズンサイエンスの拠点を形成することを狙っている。また、放射線モニタ「コガモ(Compact Gamma-ray Monitor, CoGaMo)」は1チャンネルのみの測定であるが、2チャンネルの読み出し系を用意して 3 MeV 以上での二次宇宙線ミューオン成分を弁別し、ガンマ線の検出感度をあげることを狙う。特に、アウトリーチおよび上記の測定器の改良を目的に、sony 社が発売するSpresenseボードを用いて2チャンネルの放射線測定が行える PENGUIN (Physics and Engineering Utility Introduction)ボードも開発を進めているので、導入を検討する。さらに、雷放電の光核反応で発生する中性子の測定を狙う検出器も観測ネットワークに導入していきたいと考えている。
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