研究課題/領域番号 |
22H00151
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
松尾 太郎 名古屋大学, 理学研究科, 准教授 (00548464)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 分光 / 可視光・近赤外線 / 高安定 / 制御 |
研究実績の概要 |
本年度は、主に二つのことを実施した。一つは、将来の宇宙望遠鏡への搭載可能性を広げるために、従来の焦点分光器と瞳分光器が共存できるような解を探索した。その結果、瞳分割だけでなく、瞳結合という新たな過程を加えることで、従来の焦点分光器と共存できる解を見出した。これは、スリット以降の分散素子から検出器までを共通化することができ、焦点分光器で作られるスペクトルパターンと全く同様なスペクトルを形成することができた。これまでの広がったスペクトルが検出面に形成されることなく、少ないサンプリング数にすることができた。瞳分光の最大の特徴である、波面収差に対してスペクトルの形状や位置が無依存であることを失うことなく、焦点分光器と同じ波長分解能や波長帯域を維持することができる。この検討結果は、JAXAが検討中の大型クラスの宇宙望遠鏡計画(GREX-PLUS)に利用され、瞳分光器がGREX-PLUSの高分散分光器のオプション案として採択された。また、米国が検討中のHabitable Worlds Observatory (HWO)コンセプトを推進する、NASAの研究者と瞳分光の検討を開始している。 もう一つの重要な進捗は、指向センサーで取得された像を利用しながら、長時間、指向擾乱を制御することができた。これによって積分時間を延ばすことが可能となり、統計誤差を抑えることによって精度良く系統誤差を計測できるようになった。2024年度以降に実験データを取得し、論文化することができる見込みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の実施計画として、三年度目に論文化のための実験データ取得を行う予定である。そこで、二年度目の今年度は、その実験データ取得のために必要な準備を全て完了する必要がある。研究業績の概要でも述べたように、指向センサーを見ながら指向擾乱を取得することができ、長時間積分が可能となった。実験データとして系統誤差を精度良く見積もることができる。また検出器の温度も安定にできることを確認したため、目標である10 ppm(parts-per-million)よりも小さい誤差に抑えられることが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
三年度目である2024年度に、論文として報告するための実験データを取得し、指向擾乱のある環境下で系統誤差を正確に見積もる。2024年度の早い時期にデータを取得できれば、2024年度中に論文としてデータをまとめ、投稿までを行う予定である。また、JAXAで検討中の大型クラスの宇宙望遠鏡GREX-PLUSの高分散分光器と同様に、将来のNASA大型宇宙望遠鏡コンセプトである、Habitable Worlds Observatory (HWO)への応用も検討する。これまでに、HWOの主要な関係者とコンタクトを取り、瞳分光に関する技術的な検討を報告している。今後は、紙の上での検討を発展させて、実験ベースで米国と協力しながら進めていく予定である。
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