研究課題/領域番号 |
22H00170
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
飯塚 毅 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (70614569)
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研究分担者 |
早川 岳人 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 東海量子ビーム応用研究センター, 上席研究員 (70343944)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 原始惑星系円盤 / 消滅核種 / 年代学 |
研究実績の概要 |
本研究は,同位体不均質性に立脚した新たな方法論により,初期太陽系・核宇宙年代学を再構築するものである. 初期太陽系年代学では,消滅核種26Al不均質性とTi安定同位体変動の相関から隕石26Al年代を較正し,初期太陽系イベントの年表を書き換える.核宇宙年代学では,超新星の同一過程で合成される短寿命核種92Nb・98Tcと超長寿命核種138Laの不均質性を結合することで,超新星爆発の年代を高確度で推定し,『超新星爆発が太陽系誕生の引き金』とする仮説を検証する. 2022年度には,初期太陽系年代学の研究では,26Al年代が報告されているものの,Ti同位体組成が未知の石質隕石について,Ti同位体分析を進めた.特に,近年見つかった安山岩質隕石EC002や,Asuka-881394を主対象とした.Ti同位体は,試料融解後にTiをイオン交換樹脂で分離し,多重検出器誘導結合プラズマ質量分析計(MC-ICPMS)を用いて測定した.これらの結果と,先行研究の結果を組み合わせることにより,26Al不均質性とTi安定同位体変動の相関式を正確に決定した. 核宇宙年代学では本年度,原始太陽系円盤における超新星放出物分布の不均質性を明らかにすべく,隕石試料の高精度La同位体分析を実施する.存在度の低い138Laを高感度・高精度で測定するために,MC-ICPMSに新たに10^13 ohmのファラデーカップ増幅器を導入した.さらに,研究代表者の研究グループで開発してきた3段階La分離法を用いて,隕石試料からLaを分離した.さらに,研究代表者と分担者らがこれまでに明らかにしてきた短寿命核種92Nbの不均質性についての研究成果を論文化し,国際雑誌で発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り,26Al年代既知の隕石試料のTi同位体分析を実施することができ,さらに,高精度La同位体分析に必要不可欠なMS-ICPMSの検出器のアップデートを完了することができた.
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今後の研究の推進方策 |
2023年度においては,2022年度に実施してきた高精度La同位体分析を種々の隕石試料に適用することにより,超新星放出物分布を明らかにする.さらに,これまでに明らかになっている消滅核種92Nbの不均質性と組み合わせることにより,原始太陽系円盤の同位体不均質性を引き起こした超新星爆発の時期に制約を与える.まら,92Nbよりも半減期が短く,より高精度の核宇宙年代計となりうる消滅核種98Tcを実用化すべく,娘核種である98Ruの高精度同位体分析法の確立を目指す.
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