研究課題/領域番号 |
22H00180
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
山崎 大輔 岡山大学, 惑星物質研究所, 准教授 (90346693)
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研究分担者 |
辻野 典秀 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 回折・散乱推進室, テニュアトラック研究員 (20633093)
芳野 極 岡山大学, 惑星物質研究所, 教授 (30423338)
坂本 直哉 北海道大学, 創成研究機構, 助教 (30466429)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 粘性率 / マントル最下部層 |
研究実績の概要 |
マントル最下部の粘性構造や温度構造、あるいは化学構造に物質化学的なアプローチにより新たな制約を与えることを本研究の目的としている。そのマントル最下部を主要に構成している物質は、ペロフスカイト型結晶構造を持つ(Mg,Fe)SiO3ブリッジマナイトあるいはその高圧相であるポストペロフスカイトであると考えられる。そこで、マントル最下部の温度や粘性率を物質科学的なアプローチにより考察するために、ブリッジマナイトとポストペロフスカイトのレオロジーに関する実験的研究を行う。ただし、MgSiO3 ポストペロフスカイトは120 GPaという高圧下のみで安定であり実験的困難さが大きいために、ABX3のストイキオメトリで表されるペロフスカイト型とポストペロフスカイト型の結晶構造をもつアナログ物質でMgSiO3と近い結晶軸比(c/aさらにはb/a)を持つフッ化物からのアプローチも行う。 初年度ではD111型装置高圧変形装置を用いて高温高圧下でNaNiF3に関する変形実験を行った。この装置は現在世界に数台のみであり、一つが我々の研究室に設置されている装置であり、他に、放射光施設の高圧ビームライン(高エネ研とSPring-8)に同型機が設置されている。変形実験は5-20 GPaの圧力でペロフスカイトとポストペロフスカイトのそれぞれの粘性率を測定した。その結果は、1桁の範囲内で両相の粘性率は調和的であることを示している。つまり、ポストペロフスカイトへの相転移によって大きな粘性率の変化は期待できないということである。ここで得られた粘性率は、絶対値の議論にはアナログ物質故に適さないが、相対的なそれは、その結晶構造に依存していると考えることが可能であると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NaNiF3ペロフスカイトおよびポストペロフスカイトについて変形実験を行った。特に、放射光を用いたその場観察を行い、それぞれの相における、歪み速度と応力の関係を得ることができた。ペロフスカイト相の安定領域に比して広い圧力条件でのデータを収集したことにより、ポストペロフスカイトの結果との比較に対する信頼性が高くなっている。詳細な結果に関してはそのデータ解析をすすめている段階であるが前述したように、大まかには1桁の範囲内で粘性率は調和的であることが判明した。 また、2年以降に開始する予定の拡散実験に関しても、拡散用薄膜形成装置であるパルスレーザーデポジション装置の導入が予定通り完了した。 このような状況を総合的に判断して、おおむね順調に進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
変形実験は軌道にのっている。今度は、結晶方位ごとの粘性率依存性を調査するために、単結晶あるいは定方位性のある試料を準備し、引き続き、変形実験を遂行していく。 一方、拡散実験用の薄膜形成装置の導入を完了したことから、拡散実験に着手していく。拡散実験においては、(1)薄膜形成装置の最適化、(2)MgSiO3ブリッジマナイトの拡散実験、(3)圧力発生技術開発とその技術によるポストペロフスカイトの拡散実験、を遂行していく。これらの段階では、同位体顕微鏡での拡散プロファイルの測定も重要な実験要素となっていく。
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