研究実績の概要 |
バインダージェッティング(Binder Jetting:BJT)は付加製造法(Additive Manufacturing:AM)の一つで,原料粉末に液体バインダーを噴射して接合したグリーン体を作製し,脱脂・焼結の工程を経て最終製品を作製する方法である. BJTにおいて焼結は製品の相対密度を高める重要な工程である. 液相焼結は母材粉末よりも低融点な助剤粉末を添加し,助剤の融点以上母材の融点以下の温度に保持する. 焼結中は助剤が液相となり,液相内の高速な拡散を介して固相焼結よりも緻密化が早く進行する. 液相焼結は, 添加した助剤が溶けて全体に広がることで, 粒子の再配列, 収縮, 消滅が起こり, 焼結が完了するが, その詳細な焼結挙動は明らかになっていない. これは焼結中の様子をリアルタイムで観察できていないためであると考えられる. 本研究では,Alの液相焼結の焼結挙動の解明を目的に, 焼結の前後, 焼結中をそれぞれ段階別に観察することとした. 焼結前後は微視組織観察を行い, 焼結途中は放射光X線CTによる観察を行って昇温中, 焼結温度で保持中, 冷却中にそれぞれ起こる挙動を調べた. ホットプレスで100 ℃で圧粉した焼結体の相対密度は92.4 %だった. SPring-8にて焼結を行いながら放射光X線CTで撮影した.その結果、液相焼結助剤の融解,液相の固相粉末間への浸透,気孔の生成などが観察できた. また、モンテカルロ焼結シミュレーションを活用して,個々の気孔の消失・残留を追跡した.さらに,各気孔の消失・残留のメカニズムを理解するために,焼結前の各気孔のサイズや位置等の特徴から焼結後に残留する気孔を推定することを試みた.その結果,100 MCS において焼結体中央付近に存在する大きな気孔が 1000 MCS において残留する確率が大きいことを示した.
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