研究課題/領域番号 |
22H00189
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
荒尾 与史彦 早稲田大学, 理工学術院, 准教授 (40449335)
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研究分担者 |
川田 宏之 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (20177702)
タンクス ジョナサンデビッド 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 構造材料研究拠点, 研究員 (50850947)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | グラフェン / 高強度 / フィルム / セルロースナノファイバー |
研究実績の概要 |
低エネルギーで循環する機械材料を創出することを目的に、ナノ素材であるグラフェンとポリマーを組み合わせてハイブリッド化させることで、高強度なフィル ムを生み出すことを試みた。セルロースナノファイバーとグラファイトを混ぜてロールミルを行った所、グラファイトの薄層化は5nmが限界であることが分かった。この状態でフィルムを成膜したところ、フィルムの強度向上は微増にとどまっており、この原因としてセルロースナノファイバーとグラフェン表面の間に相互作用がなく、界面での応力伝達がうまくいっていないことが考えられた。そのため、セルロースナノファイバーとグラファイトの相互作用を引き出すべく、セルロースナノファイバーの疎水面を引き出す処理について検討を行った。 セルロースとグラフェンからなるナノ素材のフィルムについて、その他の機能性として熱伝導率や電気伝導性の評価も行った。熱伝導率については300W/m・Kを達成しており、熱伝導に優れるアルミニウムより高い熱伝導率を得ることができた。グラフェンを面内に高配向させてフィルムを作ることで、金属材料を超える熱伝導率を達成することができる。また、このフィルムの電気伝導性は10,000S/mを超え、金属を超える値まではいかなかったものの、優れた電磁波シールド特性があることが分かった。 セルロースとグラファイトを水に混ぜてせん断力を付与することで、グラファイトを5nmまで薄層化することができ、熱伝導性、電気伝導性に優れる多機能フィルムを作ることに成功した。強度を両立させることができれば、多機能フィルムとしての応用が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目標の高強度化についてはまだ目標値を達成できていない。原因は特定できており、既存の技術ではセルロースナノファイバーは親水面だけであり、グラファイトに強く吸着できないことが分かった。現在、セルロースナノファイバーの疎水面を露出させる手法を検討しており、いくつかの方法で疎水面ができてグラファイトに吸着できることを確認している。一方で熱伝導率、電気伝導率についてはセルロースとグラファイトの吸着力は不要であるため、これらの値は提案した手法により今までにない高い値が得られており、総合的に勘案するとよい進捗状況であるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
ナノ素材であるセルロースナノファイバーとグラフェンからなるフィルムについて、構造材料へと応用するためには鉄鋼材料と同等以上の500MPaを超える強度が必要となる。現状では200-300MPaが限界であり、これはセルロースナノファイバーとグラフェンの間の吸着力が弱く、グラフェンへと応力が伝わっていないことに起因することが分かってきた。また既存の全てのセルロースナノファイバーにおいて、疎水面は存在せず、当初想定していた疎水-疎水相互作用が生じえないことが分かった。そこでセルロースナノファイバーについてセルロースが本来有している疎水面を生じさせる手法について、集中的に研究を進める。いくつかの方法において、セルロースナノファイバーが更に分解されセルロース由来の疎水面が露出していることを確認している。この現象を利用してグラファイトへセルロースナノファイバーを疎水-疎水相互作用で強く吸着させ、フィルムに成膜する。 またフィルムだけではなく当初から予定していた板の成形にもチャレンジする。強度の高いフィルムを積み重ねてプレス成形することで、500MPaを超えるナノ素材からなる板を作りだす。
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