研究課題/領域番号 |
22H00197
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
辻 敏夫 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 教授 (90179995)
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研究分担者 |
岡田 芳幸 広島大学, 病院(歯), 教授 (70566661)
岩瀬 敏 愛知医科大学, 加齢医科学研究所, 客員教授 (90184879)
笹岡 貴史 広島大学, 脳・こころ・感性科学研究センター, 准教授 (60367456)
吉野 敦雄 広島大学, 保健管理センター, 准教授 (90633727)
濱 聖司 広島大学, 医系科学研究科(医), 研究員 (40397980)
曽 智 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 准教授 (80724351)
古居 彬 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 助教 (30868237)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 末梢交感神経活動 / 末梢血管剛性 / マイクロニューログラフィ / 非侵襲計測 / 確率モデル |
研究実績の概要 |
本研究では,世界で初めて非侵襲かつ簡便に末梢交感神経活動を計測可能な手法を提案する.まず,(1) 研究代表者が独自に開発した末梢血管力学特性の非侵襲計測法と生体電気信号の分散分布確率モデルに基づく新たな数理モデルを構築し,末梢血管剛性から交感神経電気活動を復元する新理論「非侵襲マイクロニューログラフィ法」を確立する.次にこの手法を用いて,(2) 磁気共鳴機能画像法(fMRI)による脳活動と末梢交感神経活動の同時計測を行い,疼痛刺激に対する因果ネットワークを同定する.そして,(3) 自律神経機能の計測・評価が困難とされている脳卒中患者を対象とした自律神経検査法を新たに開発する. 2022年度は,筋交感神経活動(MSNA)の分散分布確率モデルを構築するため,末梢血管剛性を計測し,これに基づいて交感神経圧受容体感受性(sBRS)を評価した.提案モデルでは,MSNAの周波数特性をシェーピングフィルタで表現し,そのパラメータは自己回帰モデルによって決定する.また,MSNAの振幅分散は末梢血管剛性の振幅に基づいて生成する.実験では,5名の被験者から計測したMSNAを用いて提案モデルのパラメータを決定した.そして, 20名の被験者に対するバルサルバ手技実験を行い,これらのデータを用いて提案モデルで復元したMSNAと実測MSNAの周波数特性を比較した.その結果,提案モデルは振幅と周波数の両次元において実測MSNAを正確に再現できることが確認され,復元MSNAを用いたsBRSの評価が可能であることが示された.これらの結果は,非ガウス性を考慮した提案モデルの有効性と末梢血管剛性指標を用いたsBRS評価の有用性を示しており,「非侵襲マイクロニューログラフィ法」の確立に向けた重要な検証成果と位置付けられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画において,2022年度は(1) MSNAと末梢血管剛性の計測実験,(2)末梢血管剛性と皮膚電気活動から末梢交感神経活動を復元する数理モデルの開発を行う予定であった.(1)に関しては,5名の被験者からMSNAを計測するとともに,20名の被験者に対するバルサルバ手技実験を行って末梢血管剛性を計測しており,当初計画の通りデータ収集は順調に進んでいる.(2)に関しては,シェーピングフィルタと生体電気信号の振幅分散分布モデルを用いたMSNAの確率モデルを開発しており,研究代表者が独自に開発した末梢血管粘弾性モデルと組み合わせることで,末梢血管剛性からMSNAを復元する新たな技術が実現しつつある.以上より,当初計画通りに進捗しており,本研究課題の進展はおおむね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
これまでに末梢血管剛性からMSNAを復元する新たな技術の開発を進めてきた.今後は「非侵襲マイクロニューログラフィ法」の確立を目指し,(1) MSNAと末梢血管剛性同時計測実験を行うとともに,(2) 脳活動と末梢交感神経活動から疼痛刺激応答のみを分離可能な実験プロトコルを策定し,(3) 疼痛刺激に対する脳活動と末梢交感神経活動の同時計測とデータベース構築する.さらに,計測データを用いた(4) 脳活動と末梢交感神経活動のネットワーク解析と脳活動と末梢交感神経活動の因果解析を行うことにより,提案法の有用性を脳科学的に裏付けるとともに脳病変-末梢交感神経活動の関係を明らかにすることで,脳卒中患者の自律神経評価法に応用していく予定である.
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