研究課題
光ファイバ中にコアが一つだけの従来の単一コア単一モード光ファイバによる伝送容量は、伝送波長帯域の制限や耐非線形性の観点から、近い将来に限界に突き当たることが予想されている。これまで、光ファイバ通信の限界を打破するための空間分割多重伝送技術として、1本の光ファイバに多数のコアを収容したマルチコアファイバ技術、および一つのコアの中を伝搬する複数の伝搬モードを利用したマルチモード伝送技術が注目を集めてきたが、伝送容量拡大と伝送可能距離拡大の両立が課題であった。本研究では、結合型マルチコアファイバとマルチモード制御により、伝送容量の飛躍的な拡大と長距離伝送の両立を可能にする革新的な空間分割多重伝送技術を確立することを目的として研究を進めた。2022年度の研究では、結合型マルチコアマルチモードファイバにおける群遅延広がりを算出する手法として、曲げや捻じれ等の決定論的に与えられる摂動だけではなく、ファイバ長手方向のランダムな形状変化に伴う位相変化や偏波結合量変化を考慮可能な解析モデルを完成させた。また、結合型マルチモードマルチコアファイバにおける異なるモード群間(低次モード群と高次モード群間)の結合を促進するファイバ設計が可能であることを見出した。さらに、マルチコア・マルチモード伝送を実現するための石英ガラスによる平面光導波路型モード制御技術に関して、デバイス内で低次モード群と高次モード群を分離し、低次モード群にのみ任意の損失を付加し、その後、再度、両モード群を合波することによりモード依存損失を可変に制御できる導波路型モード制御デバイスを石英系平面光導波路によって実証した。
2: おおむね順調に進展している
結合型マルチコアマルチモードファイバによる伝送容量拡大と伝送可能距離拡大の両立へ向けて、当初の計画通りに研究が進展している。
結合型マルチモードマルチコアファイバの群遅延広がりは、モード数だけではなく、コア数、コア配置、および各コアの屈折率分布にも依存することになるので、モード数に応じた最適なコア数、コア配置、屈折率分布を明らかにする。また、設計結果に基づき、結合型マルチコアマルチモードファイバの試作を行い、結合型マルチモードマルチコアファイバにおける異なるモード群間(低次モード群と高次モード群間)の結合を促進する現象の実験的な確認を目指す。さらに、マルチコア・マルチモード伝送を実現するためのモード制御技術に関して、ファイバ内で低次モード群と高次モード群を交換、あるいは低次モード群にのみ任意の損失を付加し、モード依存特性を制御できるファイバ型モード制御デバイスの具体的な構成方法ついて検討を行う。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 6件)
Optics Communications
巻: 529 ページ: 129098~129098
10.1016/j.optcom.2022.129098