研究課題/領域番号 |
22H00201
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
齊藤 晋聖 北海道大学, 情報科学研究院, 教授 (20333627)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 光デバイス・光回路 / 光ファイバ / 空間分割多重 |
研究実績の概要 |
光ファイバ中にコアが一つだけの従来の単一コア単一モード光ファイバによる伝送容量は、伝送波長帯域の制限や耐非線形性の観点から、近い将来に限界に突き当たることが予想されている。これまで、光ファイバ通信の限界を打破するための空間分割多重伝送技術として、1本の光ファイバに多数のコアを収容したマルチコアファイバ技術、および一つのコアの中を伝搬する複数の伝搬モードを利用したマルチモード伝送技術が注目を集めてきたが、伝送容量拡大と伝送可能距離拡大の両立が課題であった。本研究では、結合型マルチコアファイバとマルチモード制御により、伝送容量の飛躍的な拡大と長距離伝送の両立を可能にする革新的な空間分割多重伝送技術を確立することを目的として研究を進めた。2023年度の研究では、2022年度までに見出した結合型マルチモードマルチコアファイバにおける異なるモード群間(低次モード群と高次モード群間)の結合を促進するファイバ設計指針に基づき、新規の結合型マルチモードマルチコアファイバの試作を行うとともに、モード群間結合を促進するメカニズムを解明した。また、異なるモード群が同程度の群速度で伝搬する擬似結合型マルチモードマルチコアファイバと、異なるモード群の結合が促進される強結合型マルチモードマルチコアファイバとの比較をおこない、後者の優位性を確認した。さらに、マルチコア・マルチモード伝送を実現するためのモード制御技術に関して、ファイバ内で低次モード群と高次モード群を交換、あるいは低次モード群にのみ任意の損失を付加し、モード依存特性を可変に制御できるファイバ型モード制御デバイスの構成法を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
結合型マルチコアマルチモードファイバによる伝送容量拡大と伝送可能距離拡大の両立へ向けて、当初の計画通りに研究が進展している。
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今後の研究の推進方策 |
結合型マルチコアファイバは、全てのモードをランダム結合させることにより群遅延広がりを低減させるのが一般的であるが、マルチモードファイバでは、異なるモード群間(低次モード群と高次モード群間)の結合を促進することは容易ではない。2024年度の研究では、2023年度までに試作した結合型2LPモードマルチコアファイバにおけるモード間遅延時間差の測定を実施し、異なるモード群間の結合が可能であることを実験的に実証する。また、結合型マルチモードマルチコアファイバにおいて、全てのモードをランダム結合させるには非常に大きな構造摂動を外部からファイバに加える必要があるが、2024年度の研究では、結合型マルチモードマルチコアファイバに要求される構造摂動量を低減することができるファイバ設計手法について検討する。さらに、マルチコア・マルチモード伝送を実現するためのモード制御技術に関して、長周期ファイバグレーティングを利用してファイバ内で低次モード群と高次モード群を交換、あるいは低次モード群にのみ任意の損失を付加し、モード依存特性を制御できるファイバ型モード制御デバイスについて検討を行う。
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