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2022 年度 実績報告書

遺伝子組換と非ウイルスベクター技術を用いた培養に頼らないウイルスの浄水処理性評価

研究課題

研究課題/領域番号 22H00221
研究機関北海道大学

研究代表者

松下 拓  北海道大学, 工学研究院, 准教授 (30283401)

研究分担者 白崎 伸隆  北海道大学, 工学研究院, 准教授 (60604692)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード土木環境システム / ウイルス / 浄水処理
研究実績の概要

本研究では、PCR法にて高感度で定量可能な「外来DNAを封入したノロウイルスの外套タンパク粒子(VLPs)」を、あらかじめ作製したVLPsを還元剤の添加によりいったん崩壊させた後、外来DNA共存下での塩化カルシウムの添加によりVLPsを再合成させることにより外来DNAをVLPsに封入し、作製しようと試みてきた。しかしながら、昨年度での検討では外来DNAの封入率が著しく低く、このようなDNA封入VLPsを用いても、計画当初の目標であった「低濃度ノロウイルスの浄水処理性の評価」が困難であると判断された。そこで本年度は、既にVLPsへ封入が高い率にて成功している金ナノ粒子に、あらかじめ外来DNAを修飾し、金ナノ粒子とともにVLPsへ封入する手法を試みた。しかしながら、電子顕微鏡の観察では、明確な封入が確認されなかった。これに対し、カルボキシ-EG6-ウンデカンチオールを用いたコーティング処理を金ナノ粒子に施すと、DNA修飾をしていない金ナノ粒子の封入率が大幅に向上することが分かった。今後、コーティング処理を施したDNA金ナノ粒子複合体を用いて、VLPsへの外来DN A封入を試みる予定である。
一方、浄水処理方式を、通常の浄水処理で行われる凝集-沈澱-砂ろ過処理から、凝集-MF膜処理へと変更した、札幌近郊の2つの浄水場にて、トウガラシ微斑ウイルス(PMMoV)の浄水処理工程における除去率をそれぞれ複数回調査し、変更前の除去率と比較したところ、A浄水場では、通常処理で1.5~3.3 log、膜処理では2.2.~2.9 logであり、B浄水場では、通常処理で3.2~4.7 log、膜処理では2.8~4.4 logであった。すなわち、凝集-MF膜処理でのPMMoVの除去率は、凝集-沈澱-砂ろ過処理での除去率と概ね同程度であることが分かった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度の検討にて、金ナノ粒子に外来DNAを複数本修飾することができることを確認した(5~11 copies/VLPs)。従って、これをVLPsに封入することにより、1つのVLPsに複数のDNAが封入可能であり、VLPsのPCRによる定量感度を大きく向上できる可能性が示され、次年度へ繋がる成果を出すことができた。
また、「浄水場でのPMMoV調査」についても継続してデータを蓄積しており、処理方法を「凝集-沈澱-砂ろ過処理」から「凝集-MF膜処理」へと更新した2つの浄水場でのデータを取ることができた。これにより、同一の水系にて処理法の違いがウイルス除去率に与える影響を議論することができる。
以上より、「おおむね順調に進展している」と判断した。

今後の研究の推進方策

DNA封入VLPsの作製に関しては、DNAを修飾した金ナノ粒子にコーティング処理を施すことにより(既にDNAを修飾していない金ナノ粒子のコーティングにより、VLPsへの封入率が向上することを実験的に確認している)、DNAの封入率を大幅に高め、室内浄水処理実験を行いたい。
一方、実浄水場におけるPMMoVの処理性調査に関しては、季節変動や経年変化を調べるため、近郊浄水場での調査を継続するとともに、他地域の浄水場における調査も継続して行いたいと考えている。また、PMMoV以外に、水系ヒト感染性ウイルスについても知見の集積を試みたい。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Evaluation of reduction efficiencies of pepper mild mottle virus and human enteric viruses in full-scale drinking water treatment plants employing coagulation-sedimentation-rapid sand filtration or coagulation-microfiltration2022

    • 著者名/発表者名
      Shirakawa, D., Shirasaki, N., Matsushita, T., Matsui, Y., Yamashita, R., Matsumura, T. and Koriki, S.
    • 雑誌名

      Water Research

      巻: 213 ページ: 118160

    • DOI

      10.1016/j.watres.2022.118160

    • 査読あり
  • [学会発表] 全国10カ所の水道原水における病原ウイルスの存在実態の把握:PMAxx-Enhancer-PCR法による調査2023

    • 著者名/発表者名
      白川大樹, 髙力聡史, 白崎伸隆, 松下拓, 松井佳彦
    • 学会等名
      第57回日本水環境学会年会
  • [学会発表] 培養困難なヒトノロウイルスの浄水処理性評価に向けた高感度に定量可能な革新的ウイルス様粒子の創製2023

    • 著者名/発表者名
      浅川高志, 白川大樹, 白崎伸隆, 松下拓, 松井佳彦
    • 学会等名
      第57回日本水環境学会年会
  • [学会発表] ウイルス粒子の状態変化はウイルスの凝集沈澱-砂ろ過処理性にどの程度影響するのか?2023

    • 著者名/発表者名
      平岩竜士, 白崎伸隆, 松下拓, 松井佳彦
    • 学会等名
      第57回日本水環境学会年会
  • [学会発表] 水道原水に存在する病原ウイルスの感染価評価:活性炭とUF膜を組み合わせたウイルス濃縮法の構築と適用2023

    • 著者名/発表者名
      福井健暉, 川上悟史, 白崎伸隆, 松下拓, 松井佳彦
    • 学会等名
      第57回日本水環境学会年会
  • [学会発表] Investigating virus reduction efficiencies in coagulation-sedimentation-rapid sand filtration or coagulation-microfiltration by a combination of full-scale studies and lab-scale experiments2022

    • 著者名/発表者名
      Shirakawa, D., Shirasaki, N., Yamashita, R., Matsumura, T., Koriki, S., Matsushita, T. and Matsui, Y.
    • 学会等名
      IWA World Water Congress
    • 国際学会
  • [学会発表] 低圧膜ろ過処理を導入した実浄水処理場におけるウイルスの除去性評価2022

    • 著者名/発表者名
      白川大樹, 松村拓哉, 白崎伸隆, 松下拓, 松井佳彦
    • 学会等名
      日本水道協会令和4年度全国会議(水道研究発表会)
  • [学会発表] 汎用細胞増殖系を活用した浄水処理工程におけるヒトサポウイルスの未知動態の解明2022

    • 著者名/発表者名
      白崎伸隆, 胡秋晗, 白川大樹, 高木弘隆, 岡智一郎, 松下拓, 松井佳彦
    • 学会等名
      第29回衛生工学シンポジウム
  • [学会発表] 汎用細胞増殖系を活用した下痢症ウイルスの浄水処理性の評価2022

    • 著者名/発表者名
      白崎伸隆, 胡秋晗, 白川大樹, 高木弘隆, 岡智一郎, 松下拓, 松井佳彦
    • 学会等名
      ウイルス性下痢症研究会第33回学術集会

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公開日: 2023-12-25  

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