研究課題/領域番号 |
22H00226
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
加藤 準治 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (00594087)
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研究分担者 |
西口 浩司 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (10784423)
干場 大也 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (80847038)
渡邉 大貴 名古屋大学, 環境学研究科, 特任助教 (60984937)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | トポロジー最適化 / 傾斜機能材料 / ゴム / 防振 / マルチマテリアル |
研究実績の概要 |
これまでの成果として粘弾性材料モデルとして一般化マックスウェルモデルのプログラムを作成し,感度解析も含め高精度に導出できるプログラム開発に成功している.当該年度は,マルチマテリアルトポロジー最適化の詳細検討を行い,これまでの自作の有限要素解析ソフト(C++)に実装し,その妥当性の検証を行った.また,動的解析のプログラムに4 つの粘性ばね(4 項モデル)を考慮したモデルを構築しているが,よりシンプルな挙動の評価をするために,1つの粘性ばねを用いたものを様々な周波数に対して数値実験を行い徹底検証した.これにより,物理的にも合理性の高い構造が得られるようになった.この予備検討で,最適解の合理性を確認できたため,よりリアルな材料の粘弾性特性を考慮できるようにパラメータ設定を実施した.また,ゴム材料の専門家の意見とも対比させながら,構築した理論と得られた最適構造の信頼性も担保できたと考えている.また,これまでは動的な荷重載荷点における変位の最小化を目的関数としていたが,散逸エネルギー最大化という高度な目的関数の構築に挑戦し成功した.さらに構築した最適化理論を使って最適化計算を実施し,得られた構造の力学的合理性を検証した.これにより,低周波数では,剛性の高いゴム材料が支配的となるが,高周波数では剛性の低いゴム材料が変形することで散逸エネルギーを最大化できるという機構を突き止めた.この成果は,ゴム本来の性能を制御できるようになるとともに,学術的にも極めて有効な設計手法の開発ができたと考える.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
進捗状況については,すでにマルチマテリアル化の実装と,物理的にも合理的と考えられる最適構造を得られるような理論の構築とプログラミングの実装,および数値検証を完了させることができた.また,粘性散逸エネルギーの最大化という学術的にも評価の高い問題に挑戦し,その方法を確立することができた.粘性散逸エネルギーは,いわゆるエネルギーロスを意味するものであるが,これを制御できるようになればゴム材料の適用範囲が大幅に広がるものとなりえる. 当該研究では,低周波および高周波の動的外力を与えた場合のトポロジー最適化を試みた.その結果,低周波帯においては,剛性の高い材料でエネルギーロスを大きくし,逆に高周波帯では,剛性の低い材料に大きな変形をしながらエネルギーロスを大きくするという結果が得られた.これは,力学的にも合理的な結果であると言える.これより,当該研究の状況としては,当初の計画以上に進展しているものと判断した.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,低周波および高周波という,異なる周波域の両方において,防振ゴム本来の特性を満たすための多目的最適化問題の解法を提案する予定である.この多目的最適化問題においては,低周波帯および高周波帯で最適となる構造は,それぞれトレードオフの関係にあることがわかっており,信頼できる最適解を得ることが難しくなる.このようなトポロジー最適化問題では,最適化問題としての非凸性が顕著になることから最適化アルゴリズムを慎重に選ぶ必要がある. そのため,今年度は移動漸近法(Method of Moving Asymptotes)だけでなく,新たなアルゴリムの適用可能性を調査した上で,問題に即したものを選ぶことに努める.また,場合によってはアニーリングによるアルゴリズムを適用し,量子アニーリングで解く最適化問題への展開を試みることを視野に入れて研究を進める予定である.得られた成果は,国内外の学会および論文で積極的に発信する予定である.
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