研究課題/領域番号 |
22H00239
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研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
柳 宇 工学院大学, 建築学部(公私立大学の部局等), 教授 (50370945)
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研究分担者 |
伊藤 一秀 九州大学, 総合理工学研究院, 教授 (20329220)
鍵 直樹 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 教授 (20345383)
永野 秀明 東京都市大学, 理工学部, 准教授 (50610044)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 建築環境 / 呼吸器系感染症 / ホット・スポット / リアルタイム検知 / シミュレーション / リスク評価 / 緩和策 |
研究実績の概要 |
2022年度では,国際ジャーナル論文6件,国際会議論文3件,国内学会6件,学術雑誌解説・総説5件を発表した。本年度の研究実績は以下に示す通りである。 (1)ホットスポットの迅速検知システムの構築:バイオエアロゾルをリアルタイム検知するバイオセンサーの開発においては,その感度と精度を実験的及び現場での実証試験を行った。また,人位置をリアルタイム検知するシステムを構築し,そのシステムを用いて,大学学習ラウンジ,オフィスビル執務室などを対象に予備的な検証試験を行った。(2)シミュレーション:微細な身体振動を再現した数値人体モデルの境界条件を作製し,室内流れ場解析を連成解析することで,人体周辺微気象形成と呼吸空気質評価に与える影響を定量的に把握した。室内環境中に放出されたバイオエアロゾル(飛沫・飛沫核)の室内移流拡散と,気道を再現した数値人体モデルの連成解析手法を構築し,人体周辺のどの領域の空気・バイオエアロゾルをどの程度吸入するかをリバースシミュレーションの技術を適用することで定量的に評価した。数値気道モデル内のバイオエアロゾル沈着分布の解析技術を確立し,気道内のウイルス曝露と感染リスク評価の基盤となる初期ウイルス曝露量・分布データを蓄積した。(3)人行動モデルの構築:人の座席選択におけるアンケート調査に基づき,そのアンケート結果を再現するための行動モデルを多項ロジットモデルによって定式化した。それを用いたシミュレーションによって,感染者が感染性物質を吐出すると仮定した場合には,選好度の高い座席において残留物質濃度が高く維持されることを定量的に確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度では,研究代表者と分担者らは当初計画通り研究を進めた。詳細について次に示す。 (1)ホットスポットの迅速検知システムの構築:① リアルタイムバイオエアロゾル粒子検出センサー(BS)の開発について,計測機器メーカの協力を得てほぼ予定通りに進んでいる。BSに関する実験について,溶媒(超純水,IPA)およびPSL粒子(0.5,1,2,3,5um)と蛍光粒子(0.5,1,2um)で10分間測定し,その感度を確認した。BSに関する実証について,オフィスビルと大学のラウンジを対象に,BSの測定値と生菌(細菌)の測定値を比較し,両者間に有意な相関関係はあることが分かった。 (2)シミュレーション:微細な身体振動を再現した数値人体モデルの境界条件を作製し,室内流れ場解析について連成解析を行った。室内環境中に放出されたバイオエアロゾル(飛沫・飛沫核)の室内移流拡散と,気道を再現した数値人体モデルの連成解析手法を構築し,人体周辺のどの領域の空気・バイオエアロゾルをどの程度吸入するかを定量的に評価した。数値気道モデル内のバイオエアロゾル沈着分布の解析技術を確立し,気道内のウイルス曝露と感染リスク評価の基盤となる初期ウイルス曝露量・分布データを蓄積した。 (3)人行動モデルの構築:人の座席選択におけるアンケート調査に基づき,そのアンケート結果を再現するための行動モデルを多項ロジットモデルによって定式化した。それを用いたシミュレーションによって,感染者が感染性物質を吐出すると仮定した場合には,選好度の高い座席において残留物質濃度が高く維持されることを定量的に確認した。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は,①ホット・スポットからのバイオエアロゾルの発生と,人体発生する二酸化炭素濃度をリアルタイムでの検知に関して実験および諸環境における実証試験を重ね,その精度を検討する。②計測した人位置計測システムATRackerのデータに基づき,対象環境における人の行動を左右する因子を抽出し,それらに基づいて対象環境下の人の行動を説明可能なモデルを定式化する。そのうえで,空間内の病原物質分布を仮定した場合の拡散伝播過程をシミュレーション上で検証する。③前年度に作製した室内環境解析に統合した上気道再現型の数値人体モデルを用い,室内環境中でのバイオエアロゾル曝露に関する統合シミュレーション技術を確立し,室内バイオエアロゾル濃度に対する,呼吸濃度と鼻腔内沈着量,上気道沈着量の精緻な解析技術を確立する。その上で,粘膜上皮上でのウイルス増殖を定量的に予測するHost Cell Dynamics モデルを上気道モデルに統合することで,バイオエアロゾル沈着から気道粘膜上皮上でのウイルス増殖を定量的に予測可能な感染リスク評価のための一連の数値解析モデルを開発する。さらに,上記のモデルとMASを用いたシミュレーションの連成による被ばくリスクの高精度な評価モデルを構築する。 今後,上記の研究を精力的に取り組み,その研究成果を国際ジャーナルに投稿する予定である。
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