研究課題/領域番号 |
22H00248
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
丸山 敬 京都大学, 防災研究所, 教授 (00190570)
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研究分担者 |
井口 正人 京都大学, 防災研究所, 教授 (60144391)
竹見 哲也 京都大学, 防災研究所, 教授 (10314361)
内田 孝紀 九州大学, 応用力学研究所, 准教授 (90325481)
西嶋 一欽 京都大学, 防災研究所, 准教授 (80721969)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 火山噴出物 / 飛散 / 拡散 / 数値解析 / 火山災害 |
研究実績の概要 |
本年度は、噴石や火山灰、火山ガスなどの火山噴出物の運動を記述する物理モデルを、非定常な温度流れ場を再現できるラージエディシミュレーションを用いた数値計算法に組み込み、火山周辺の気流場とともに計算で再現できるようにした。これにより、本研究の目的の1つである、「火山噴出物の運動と大気運動を統合的に解析する、新たな火山噴出物の飛散・拡散挙動に関する解析手法の開発」のうち、火山ガスの移流・拡散を火山周辺の流れ場と同時に解析することができるようになった。 噴石の飛散計算に関しては、噴石の空力特性を知る必要がある。噴石の空力特性は形状に依存するため、国内外の幾つかの火山の火口付近において噴石を採集し、本研究経費で新たに購入した形状読み取り装置により、噴石の3次元形状を数値データとして読み取った。これにより、不整形な噴石の形状の特徴を明らかにし、空力特性を知るための風洞実験等の基礎資料となるデータが得られた。 本研究のもう1つの目的である、「火山災害の防災・減災対応策の実効性向上」に貢献するために、採取した噴石を、ガラスや、瓦など、建築物の外装材に衝突させて、噴石落下時の衝撃力を明らかにした。 2023年度には、開発した数値流体解析手法の妥当性や精度検証、さらには、火山噴火のシミュレーションを種々の条件で行い、火山噴出物の気流に及ぼす影響、気流が火山噴出物の飛散や拡散に及ぼす影響などを明らかにするために、水槽を用いた室内実験を予定している。そのため、小型の水槽を作成して予備実験を行い、来年度に向けた実験装置の要求性能の確認、実験方法、計測機器の選定、設置方法などの検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は、“噴石・火山灰の飛散運動のモデル化”、“気流場の解析、観測データの収集”、“実験データの収集のための実験準備”を行った。以下にそれぞれの詳細を述べる。 “噴石・火山灰の飛散運動のモデル化”については、周囲の気流とともに運ばれる火山ガスや微小な粒子である火山灰、風に流されて移流する礫、風の流れにはあまり影響されずに弾道軌道を描いて飛散する大きな噴石など、その飛散の仕方の違いを、物理的にモデル化して、火山周囲の非定常な温度場流れを再現できるラージエディシミュレーションを用いた数値計算法に組み込んだ。さらに、実際の火山の火口周辺で噴石を採取し、その形状を読み取って数値データ化した。これにより、過去の研究成果等と照らし合わせて、噴石の飛散運動を計算する際に必要となる空力特性を明らかにするためのデータを収集することができた。 “気流場の解析、観測データの収集”については、噴火時の火山周囲の気流性状を、広域の気象場から火口付近の詳細な乱流場までを接続しながら解析するために、広域の気象場は気象予報に用いられるメソスケールモデルを用いた気象計算ソフトWRFにより求められ風速場を境界条件として取り込めるようにフォーマットを変換した。さらに、これまでに観測・収集された噴火時の噴石の飛散性状、火山灰や火山ガスの拡散性状の観測データを検証するとともに、京都大学防災研究所付属の桜島火山観測所において桜島の噴火の観測を引き続き行った。 “実験データの収集のための実験準備”に関しては、風洞実験用の噴石模型作成のために、噴石形状の3次元数値データを収集した。火山灰や火山ガスの噴出・拡散に関しては、水槽を用い、微粒子や染料、塩などを混ぜて濃度や密度を変化させた噴流実験を予定しており、それに向けた実験装置の要求性能の確認、実験方法、計測機器の選定、設置方法の検討などを行うべく小型の水槽を作成した。
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今後の研究の推進方策 |
来年度以降、”噴石・火山灰の飛散”解析については、本年度採集した噴石の形状データからその特徴を抽出し、飛散解析に必要となる空力特性を実験等により明らかにする。実験は、新たに購入するサーモカメラおよび加熱炉により噴石を加熱し、風洞気流内で温度変化を測定し、噴石の熱伝達特性を明らかにする。火山灰や火山ガスの噴出・拡散に関しては、新たに購入する水槽内可視化PIVシステムや噴流実験用水槽および火山模型を用いて、微粒子や染料、塩などを混ぜて濃度や密度を変化させた噴流実験を行い、精度検証用のデータを収集する。これにより、2022年度に開発した物理モデルを組み込んだ解析プログラムの適用性・精度検証を行う。 ”気流場の解析”については、昨年度までに開発した解析プログラムを用いて、噴火時の火山周囲の気流性状を、広域の気象場から火口付近の詳細な乱流場までを接続しながら解析する。その際、気象予報に用いられるメソスケールモデルを用いた気象計算ソフトWRFにより求め、広域の気象場を大気の安定度など種々の気象条件を実際に即して再現し、境界条件として取り込めるようにする。火口付近の詳細な気流場は、より細かな解像度を用いて計算する。その際、地形の凹凸、地表面の植物や建物など気流を乱す粗度の影響を取り込むキャノピーモデルを組み込む。 ”火山ガスの噴出・拡散”に関しては、開発した解析プログラムを用い、種々の条件を変えた計算を行って、観測および実験データとの比較・検証を行う。 さらに、桜島の噴火を例として実事例解析を行い、噴石や火山灰の飛散範囲、火山ガスの濃度分布の予測・観測値との比較を行い、その結果をハザードマップ等の作成に活用し、火山噴火を間近に持つ周辺自治体と協力・連携して地域防災計画、広域避難計画の策定等に実装し、火山災害の防災・減災対応策の実効性向上に貢献する活用方法を探る。
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